10/16 07:00 更新

5000年ぶりに、
人が触った

――大ピラミッドの時代の器が、トルコの海の底に

写真はイメージ Photo by Ecrinn Burgazlı on Unsplash

10/16 06:00 / 発信国:トルコ / 記者:工藤

トルコの海で世界最古かもしれない沈没船、なのに船がない

トルコ南部のケコバ島の沖。水深およそ30メートルの海底に、素焼きの器が30個以上転がっていた。そばには、石でできたいかりが3つ。器は4400〜4700年前のものと見られ、世界で最も古い沈没船の積荷かもしれない。アクデニズ大学のハカン・オニズ准教授のチームが調べた。10月14日に各国で報じられた。

では、船はどこにあるのか。ない。木でできた部分は海の中で朽ちて、残っていない。あるのは、器と石のいかりだけだ。船の形も大きさも、散らばった積荷から推し量るしかない。長さは10メートルほどだったらしい。

見つけたきっかけは、地元の船乗りの話だった。2024年、その話を手がかりに潜った調査で、積荷が見つかった。本格的な水中の発掘が始まったのは、2026年に入ってからだ。

年代は、器の形と飾りから当てた

木が残っていないと、年代を測るのは難しい。そこで研究チームは、器の形と飾りを手がかりにした。底が平らで、横に取っ手が付く。同じ形の器は、エジプトのギザやサッカラ、トルコのトロイ、クレタ島の遺跡からも出ている。それらと見比べて、沈んだのは紀元前2700〜2400年ごろ、と見当をつけた。エジプトのギザに大ピラミッドが建てられていたころと重なる。

では「世界最古」と言い切れるのか。これまで最古とされてきたのは、ギリシャのドコス島沖で1975年に見つかった船だ。その積荷は紀元前2200年ごろのもの。ケコバの船のほうが、200年から500年ほど古い計算になる。器を調べたマッコーリー大学のカリン・ソワダ博士は「これが最古の沈没船だと言えると思う」と話している。ただ、正確な年代も、船がどこへ向かっていたのかも、まだ研究の途中だ。

トルコの地中海沿岸では、この15年で420隻の沈没船が記録されている。そのうち青銅器時代のものは、この船を含めて3隻しかない。

粘土は、ヨルダン渓谷のものだった

粘土を調べると、器の一部はヨルダン渓谷の工房で作られたらしい。トルコのメフメト・ヌーリ・エルソイ文化観光大臣が、そう話した。船はレバントの港を出て、トロイか、クレタのミノア文明の地へ向かう途中で沈んだらしい。

エジプト・ギザのピラミッド
写真はイメージ Photo by Osama Elsayed on Unsplash

積荷には、妙な器が1つあった。体に9つの刻み目と、2つの穴がある。長い航海の途中で、バターやチーズを作るのに使ったのではないか、と研究者は見ている。だとすると、船にヤギを乗せていたのかもしれない。

器は引き揚げられた。塩を抜くために水に浸す作業が続いている。オニズ准教授は「5000年ぶりに、これらの物に触れた最初の人間が私たちだ」と話した。

そして、器の中には中身の跡が残っていた。ソワダ博士は「中をのぞいて、気を失いそうになった。これだけ見えるとは信じられなかった」と話している。光るような残り物で、オリーブ油か、ワインか、木の樹脂か。4700年前に積まれた中身が何だったのかは、いま検査中だ。

出典

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