10/16 07:00 更新

誰かのごみは、
誰かの芸術だ

――ごみ収集の責任者が

写真はイメージ Photo by Egor Komarov on Unsplash

10/16 04:00 / 発信国:オランダ / 記者:工藤

ごみ収集車に詩を1行。38年続けたら、オランダの国の遺産になった

ごみ収集車の横っ腹に、詩が1行、大きく書いてある。オランダのロッテルダムでは、1988年からずっとそうだ。2026年10月13日、この詩の行がオランダの無形文化遺産の目録に入ったと、市が発表した。

祭りが終わっても、詩を残したかった

始まりは、この街で開かれるポエトリー・インターナショナル・フェスティバルだ。世界中の詩人が来て、詩を読んで、帰っていく。祭りが終われば、詩も街から消える。それが惜しかった。

なぜ、ごみ収集車なのか。言い出したのは、美術家のハンス・アベルマン。当時、市の美術センターで公共の場所の美術を任されていた。詩はみんなのものだから、できるだけ気軽に、街じゅうに届けたい。一か所に置く作品ではなく、どの地区にも回っていく車を選んだ。そうして、詩の祭りの事務局と、市のごみ収集会社Rotebに話を持ちかけた。

1988年1月27日、Rotebに新しい収集車が12台届いた。全部の車体に、詩の1行。お披露目ではヘリコプターが飛び、花火が上がった。数百人が沿道に並び、Rotebの社屋の屋上にも人が上がった。ごみ収集車12台の、お披露目である。

街を走る道路清掃車
写真はイメージ Photo by You Le on Unsplash

最初の1行を書いたのは、街の詩人ユルス・デルデル。「Het gedicht is een bericht」。詩は、おしらせだ(訳)。この1行が、そのまま計画の名前になった。38年たったいま、毎年必ず1台に戻ってくるのは、この行だけだ。

いまは150行以上が街を走っている。今年は、オランダ手話の詩が初めて車体に載った。

収集の責任者トーマス・ファン・ブラケルは、市の発表でこう話した。「ある人にとってごみであるものが、別の人にとっては芸術だから」(訳)。運転手のジェシカ・トロースも、地元局レインモントに「ほかでは見ない。ロッテルダムだけ」と話した(訳)。

遺産になったから続く、という話ではない。市とポエトリー・インターナショナルは2026年、期限を決めずに続けることで合意した。その取り決めには、条件が一つ付いている。ロッテルダムの街には、いつでも最低75行の詩が走っていなければならない。

出典

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