10/14 18:26 更新

急いで、しかしあわてずに
表示された道から、外へ

――ある会場の場内放送が、3000人に

写真はイメージ Photo by Chris DeSort on Unsplash

10/10 21:56 / 発信国:ドイツ

ドイツのアリーナ、3000人が外へ 日本の満員なら何分で出られるか

満員のアリーナで、試合が始まる直前にサイレンが鳴る。場内放送が「表示された避難路から外へ出てください」と言う。自分の席は上の段。何分で外に出られるだろうか。

これは日本の話ではない。2026年10月9日の夜、ドイツ・ドレスデンのJoynext-Arenaで実際に起きたことだ。

試合開始の直前、3000人が外へ

アイスホッケーのドイツ2部リーグDEL2、ドレスデン・アイスレーヴェン対ブルーデビルス・ヴァイデンの試合が19時30分に始まる直前、サイレンが鳴った。場内放送は「技術的な故障が起きました。急いで、しかしあわてずに、表示された避難路から建物を出て、屋外へ向かってください」と伝えた(ドイツ語の放送を訳した)。3000人を超える観客が外へ出た。消防も駆けつけた。

火事だったのか。火はなかった。19時41分、誤報と分かった。その瞬間、ファンから歓声が上がったと現地の報道は伝えている。試合は30分遅れの20時に始まり、ドレスデンが5対1で勝った。けが人の話は出ていない。

サイレンから誤報の判明までは、11分ほど。この会場の定員は、アイスホッケーのときは4412人だという。その夜は3000人余りがいた。

壁に付いた火災警報の装置
写真はイメージ Photo by Salah Regouane on Unsplash

日本の満員のアリーナなら、何分で出られるのか

ここが、ややこしい。日本の法律に「アリーナは何分で空にすること」という時間の決まりはない。

非常口の表示と階段
写真はイメージ Photo by Bernard Hermant on Unsplash

建築基準法施行令の第129条に、階避難安全検証法という決まりがある。「当該階からの避難を終了するまでに要する時間」が、「煙又はガスが避難上支障のある高さまで降下するために要する時間」を超えないことを確かめる、という中身だ。答えは建物ごとの計算で決まる、ということになる。

目安になる数字は、海外の指針にある。英国のグリーンガイドは、人が出口を通る速さの上限を、平らな場所で幅1mあたり毎分82人、階段では毎分66人としている。

この82人を、そのまま割り算に使ってみる。3000人を幅10mぶんの出口から出すと、4分弱。1万人なら、12分を超える。実際は通路の曲がりや階段、人のためらいで伸びる。あくまで下限の目安だ。

日本の会場も、時間がかかる前提で訓練している。アルバルク東京は2026年3月29日の試合のあと、TOYOTA ARENA TOKYOで観客が入ったままの避難訓練をすると告知した。想定は「興行中に地震が発生し、施設外へ避難」で、訓練は30分程度の予定だった。沖縄サントリーアリーナでも2025年12月10日、試合中に火災が起きた場合を想定し、スタッフ約40人が参加する訓練をしている。

できるのは、席に着いたときに自分にいちばん近い出口を目で確かめておくことくらいだろう。3000人を外に出した警報の正体は、今も「技術的な故障」の一言だけ。何が壊れていたのかは、報じられていない。

出典

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