何しに来たんだと思った
来てほしくなかった
――ある知事が、食事に不満を言った客人に
名古屋で金3つ独占 腕も手も使えない新競技テックボール
2026年10月6日、愛知県の大村秀章知事が、タイのテックボール代表について「何しに来たんだと思った。来てほしくなかった」と述べた。愛知・名古屋アジア競技大会の組織委員会会長としての発言で、毎日新聞が同日夕方に配信した。知事は「『こんな料理しかない』というのはちょっとひどい。再生回数稼ぎに来たのかと思った」とも語っている。
発端は9月18日。タイ代表を率いるオト・レワット氏が、フェイスブックのページ「Teqball Thailand Inside」に名古屋での昼食の動画を投稿した。映っていたのは清涼飲料とスープ、細い麺で、レワット氏は「俺には少なすぎる! 白米しか食べられない」「毎日野菜ばかりで、2種類選ばせてくれない、1種類だけだ」と訴えた。これをタイの人気局チャンネル3が朝のニュース番組で取り上げ、タイ国内に広がった。
日本に伝わったのは、この言い合いの部分だけだ。そのテックボールがどんな競技なのかは、ほとんど伝わっていない。先に競技の中身を見ておきたい。
腕と手は使えない。台にも相手にも触れない
国際テックボール連盟(FITEQ)の競技規則によると、テックボールは中央が盛り上がった専用の台を挟んで、サッカーボールを蹴り合う競技である。返球に使えるのは、手と腕以外の体のどこか。1回の返球は3タッチまでで、同じ部位を続けて2回使うことは禁じられている。ダブルスでは、その3タッチのうち一度は味方にパスしなければならない。台にも相手にも触れてはいけない、という規則もある。規則の上で、相手と体がぶつかる場面が起こらないようにできている。
生まれたのはハンガリーで、笹川スポーツ財団の記事によれば2012年のことだ。卓球台の上でサッカーボールを蹴っていて、台を曲げれば足元に跳ね返ると考えたのが始まりだという。同じ記事によると、競技は124カ国以上に広がった一方、日本国内の競技人口は100人程度、専用の台は100台ほどしかない。
不満を言ったタイが、金を3つ独占した
名古屋での試合は9月17日から20日まで、名古屋市東スポーツセンターで行われた。15カ国から55人が出場し、種目は男女のシングルスとダブルス、混合ダブルスの5つ。その金メダル5個のうち3個を、タイが取った。男子ダブルス、女子ダブルス、混合ダブルスである。
9月20日の混合ダブルス決勝は、日本の早稲昭範・坂本唯那ペアとタイのペアの対戦になり、日本は0-2(4-11、5-11)で敗れて銀メダルだった。日本オリンピック委員会の記事によると、会場の外には一時入場制限がかかるほどの長蛇の列ができ、客席は立ち見が出る超満員になった。早稲は「優勝したタイとは総合的な力や技術力において、まだ差があると痛感した」と話している。その早稲は、日本テックボール協会の会長でもある。協会の会長が選手として出て、銀メダルを取った競技だった。
食事を手配したのは、組織委ではなかった
では、昼食はなぜあの内容だったのか。組織委員会は9月22日、競技会場の食事は組織委が提供したものではなく、各競技連盟が手配したものだと説明している。毎日新聞によると、テックボールはアジア・オリンピック評議会(OCA)からの要望を受けた競技だ。組織委が運営の実務や経費を負担しないことなどを条件に、2026年2月に正式競技へ追加された。誰が昼食を用意したのかという説明は、この条件とつながっている。
大村知事は10月4日の会見では、食事について「食事は高い評価をいただけて、満足をいただけたものと考えている」と述べていた。これは、選手村を設けず、宿泊施設に使ったコンテナハウスとクルーズ船についての発言で、競技会場で出された食事の話ではない。
ネットの評判
Yahoo!ニュースに配信された毎日新聞の記事には、2,000件を超えるコメントが付いた。目立つのは、知事という立場での言い方を疑問視する声である。「来てほしくなかった」がタイ代表全体に向けた言葉と受け取られることを心配する書き込みや、運営の責任者として先に大人の対応をすべきだったという指摘が並ぶ。タイ側では、チャンネル3が取り上げたあとに「かわいそう」「本当にひどい」といった反応が広がったと、THE DIGESTが伝えている。出された食事そのものを擁護する声は、確かめられた範囲では見つからなかった。
組織委が運営の実務も経費も負担しない条件で加わった競技が、入場制限がかかるほどの客を集めた。その競技で金メダルを3つ持ち帰ったのが、昼食の動画を投稿した国である。
- 大村知事「来てほしくなかった」 食事への不満投稿のタイ代表に(毎日新聞)
- 「少なすぎる!」テックボールのタイ代表指揮官、アジア大会の食事に困惑(THE DIGEST)
- 【アジア大会】大村秀章知事が会見 「アジア版五輪」の成功を強調(東スポWEB)
- 誕生約15年の新競技テックボール、未来につながる銀メダル(笹川スポーツ財団、2026年9月24日、松瀬学)
- テックボール日本代表が混合ダブルスで“歴史的”銀メダル獲得(日本オリンピック委員会)
- Rules of the game(国際テックボール連盟 FITEQ)
- Teqball at the 2026 Asian Games(英語版ウィキペディア)
- テックボール|愛知・名古屋アジア大会(JOC)
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