10/14 00:09 更新

熱は下がったのに
気持ちが戻らない

――100メートルで金を取った17歳が

写真はイメージ Photo by Mariusz Smenzyk on Unsplash

10/13 23:45 / 発信国:日本

39度の熱の8日後、17歳・大橋信が世界記録達成

9月24日、愛知・名古屋アジア大会の競泳男子200メートル平泳ぎ決勝で、17歳の大橋信が2分04秒83で優勝した。中国の覃海洋が2023年7月に出した2分05秒48を、0秒65更新する世界新記録だった。大橋の所属は枚方SS。四條畷学園高校に通っている。

予選のタイムは2分09秒93。決勝は、それより5秒以上速い。同じ種目で、なぜこれだけ違うのか。その理由は、どの報道にも書かれていない。分かっているのは、決勝までの8日間が普通ではなかったことだ。

39度の熱は、体ではなく心にきた

太田伸コーチの話では、大橋は9月16日の夜に熱を出している。最高で39度まで上がった。熱は数時間で下がった。17日はもともと完全に休む日だった。18日から練習に戻ったが、調子を整えるための軽い内容だったという。

体温計
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大会では、21日の100メートル平泳ぎが先にあった。58秒64で中国の董志豪と同着の優勝。金メダルだ。それでも本人は、納得していなかった。

「体調不良の影響が、体ではなく心にきてしまった。気持ちが乗らなかった部分があると思います」

熱は下がったのに、気分だけ戻ってこない。17歳はそれを、勝ったレースの直後に自分の言葉で説明した。太田コーチは「そのへんはすごく頼もしいなと感じました」と話している。

「2分05秒台でいい」が、2分04秒83になった

では、3日後の200メートルで何が起きたのか。本人は決勝の前、目標を下げていた。

「レース前は、自分を安心させるために2分05秒台が出せればいいと思っていました」

出たのは2分04秒83。自分で引いた線より、さらに速い。調子が最高でキックもよければ、2分03秒台も狙えたとも話している。本人の感覚では、最高の状態ではなかったのだ。

レースの中身も強い。100メートルの通過が59秒89。2位は2分08秒67で、3秒84の差がついた。5位の渡辺一平は2分09秒50。これは大橋の予選のタイムと0秒43しか違わない。

なぜ急に速くなったのか。8月のパンパシフィック水泳選手権では、200メートルが2分08秒27で3位だった。太田コーチは、そこから200メートル中心の練習に変えたと話す。

「いつもなら僕が出した練習メニューを嫌がるのに、今回は嫌がらなかった」

大橋は3月の日本選手権でも200メートルで2分06秒59を出し、史上最年少で平泳ぎ3冠になっている。レース後、本人はこう話した。「これで北島康介さんと同じ道を歩めそうで、すごくうれしいです」。北島は2002年の釜山アジア大会で、同じ200メートル平泳ぎの世界新を出している。

ネットの評判

ロンドン五輪の200メートル背泳ぎで銀メダルを取った入江陵介は、Xに「大橋信選手の世界新を生で見れて感動」と書き、「鳥肌立ち過ぎて風邪ひきそう」と続けた。

その投稿には「すごかったです!!!」「誇らしいです」という返信が並んだ。「いやぁ、正直世界新までとは思っていませんでした」という声もある。「風邪は引かないでください」と、入江に返した人もいた。賛否が割れる話ではない。

驚いたのは日本のファンだけではない。銅メダルだった韓国の調成載(チョ・ソンジェ)は、こう話した。「平泳ぎには強力なライバルがいた。正直言って、世界記録が生まれるなんて想像もしていなかった」

大橋自身は「世界記録は私の目標だったので、達成できてとてもうれしい」と話し、次の目標に世界選手権の金メダルを挙げた。熱が39度まで上がった夜から、世界記録までは8日だった。

出典

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