10/13 23:45 更新

言ってることは、
間違ってないでしょ

――カスハラをした人の6割が、そう思っていた

写真はイメージ Photo by Sporisevic Photography on Unsplash

10/11 14:00 / 発信国:日本

カスハラをした人の7割は気づいていない 国の手引が書いた「30分」

10月1日、改正労働施策総合推進法が施行された。カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、企業の義務になった。方針を決めて社内に知らせる、相談の窓口を作る、起きたあとに素早く手を打つ。会社がやることは、これで決まった。

では、客の側はどうなのか。弁護士ドットコムが2025年1月、会員800人に聞いた調査では、「カスハラをしたことがある」と答えた人が10.1%いた。だいたい10人に1人だ。そのうち71.6%は、自分の言動がカスハラに当たるかもしれないとは、そのときは気づいていなかったと答えている。

なぜ、気づかないのか

同じ調査では、なぜそうしたのかも聞いている。一番多かった答えは「正当な批判・論評だと思ったから」で60.5%。次が「怒りが収まらなかったから」の45.7%だ。「嫌がらせをしたかったから」は3.7%しかない。

つまり、多くの人は嫌がらせをしているつもりがない。正しいことを言っているつもりなのだ。ここが、ややこしい。

国の線引きも、言っている中身が正しいかどうかでは決まらない。厚生労働省は、客などがする「社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されるもの」をカスハラとしている。見られるのは、要求の中身ではなく、その伝え方と程度のほうだ。

ネットの評判

この話を伝えたITmedia ビジネスオンラインの記事には、Yahoo!ニュースで250件を超えるコメントが付いた。目立つのは、接客をしたことがある人の声だ。「常軌を逸したクレームだったりしてもそれが自分のミスや多少の怠慢で引き起こされたものだと、非がないわけではないから冷静に対処しづらかった」という書き込みには、360件を超える共感が集まった。

会社に向けた声も多い。「ここまでなら守る、ここから先は毅然と断る・警察につなぐ」という柱を経営側が通すべきだ、という意見。「従業員を孤立させない安心感を作ること」こそ対策の本質だ、という意見。駅員にボディカメラを付けたらカスハラが減ったという話を挙げ、店にも広げてほしいという書き込みもあった。一方で、人手不足で店員の接客態度が悪くなっていると書く人もいる。客の側だけの話ではない、という見方だ。

現場が知りたいのは、どこで線を引くかだろう。東京都は、カスハラを未然に防ぐための研修用の動画を公開している。前半は最初の受け答えの大切さを、後半は会社どうしの取引で起きるカスハラを扱っている。

電話で30分、数えているのは店員の側

厚労省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルには、時間の目安が書いてある。

空港のチェックインカウンター
写真はイメージ Photo by Edwin Petrus on Unsplash

対応できない理由を伝えても、話が前に進まなくなる。そこから30分ほど過ぎたら、帰ってもらうよう頼むか、電話を切ってよい。それでも30分ほど居座るなら(話が止まってから合わせて1時間ほど)、はっきりと帰るよう求める。

電話で30分。納得できないまま30分粘ることは、客の側からすれば、そう特別なことではない気もする。でも受話器の向こうでは、その30分が「業務に支障」として数えられている。

ANAとJALは2024年6月28日、カスハラに当たる行為を9つに分けて示した。そのうちの1つが「業務に支障を及ぼす行為」で、例として「長時間拘束、複数回のクレームなど」が挙がっている。暴言や暴行と同じ並びに、長さが置かれているのだ。発表では、2023年度に確認されたカスハラが、両社それぞれ300件程度あったという。

今年5月1日からは、航空会社の団体である定期航空協会の動画が、空港で流れている。加盟各社と作ったもので、羽田・成田・新千歳・伊丹・福岡・沖縄の空港が対象だ。9つの類型を示す内容で、6月からは機内でも流している。

ただ、肝心の「何分で線を越えるのか」は、国が決めてくれるわけではない。厚労省の手引は、この30分や1時間を「あくまで一例」と書いている。具体的な時間は、業種や業態を踏まえて、各企業が決めるものだ、と。

この話、あなたはどっち? →

出典

よく読まれている記事

こちらの記事も

← 一覧へ戻る