ついでに点滴も、
お願いできますか
――ある飼い主が、留守中の世話を頼んだ人に
写真はイメージ Photo by Gaelle Marcel on Unsplash
猫に点滴したシッターに罰金10万元 台湾、資格のない仕事の境目
出張で3日、家を空ける。腎臓の弱った猫には2日に一度の点滴が必要で、留守番を頼んだ人に、その針もお願いした。これはたとえ話だが、同じことが台湾で実際に起き、針を刺した人に10万台湾元の罰金が科された。
舞台は台湾、新北市
陳姓のペットシッターの女性は、飼い主の依頼で自宅を訪ね、腎臓病の猫に2日ごとに皮下輸液(点滴)をしていた。獣医師の資格は持っていない。通報を受けた新北市動物保護防疫処(動保処)が調べ、獣医師法に違反すると判断した。
台湾の獣医師法は、資格のない者が獣医療行為をすることを禁じている。罰則は10万台湾元以上50万元以下の罰鍰(行政上の罰金)で、使った薬剤と器具は没収される。動保処がこの女性に科したのは、下限にあたる10万元だった。飼い主から頼まれていても、頼まれた人に点滴の経験があっても、判断は変わらないという。
その後、猫がどうなったか、飼い主に処分があったかは、どの報道にも書かれていない。
点滴は世話か、医療か
針を刺すだけで、なぜ違法になるのか。新北市獣医師公会(獣医師会)の理事長、駱清波氏は、皮下輸液は「単なる日常の世話」ではないと述べる。猫の体調によって、入れる液の中身も量も変わる。どこにどう刺すかも、刺したあとに何を見ておくかも変わる。手順を誤れば、感染や出血などの害が出ることもある。
動保処の線引きは単純だ。飼い主が獣医師の指示どおりに自分のペットの世話をするのは、家での看護にあたる。委託を受けた第三者が同じことをすれば、医療行為になる。猫も針も薬も同じで、違うのは誰が持つかだけだ。
日本も、シッターに医療の資格はない
日本でも構図は変わらない。獣医師法第十七条は、獣医師でなければ飼育動物の診療を業務としてはならないと定める。犬と猫はその飼育動物に入っている。違反すれば2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、あるいはその両方が科される。こちらは行政の罰金ではなく刑事罰だ。
では、ペットシッターはどういう資格の人なのか。仕事として他人のペットを預かるには、第一種動物取扱業(保管)の登録が要る。福岡県の案内は、この保管業にあたる例としてペットのシッターを名指しで挙げている。事業所ごとに、常勤職員のなかから動物取扱責任者を1人以上置くことも求められる。ただしその要件は、獣医師か愛玩動物看護師の免許のほかに、1年以上の実務経験と所定の学校の卒業、または1年以上の実務経験と所定の資格でも満たせる。登録は商売をしてよいという登録で、医療をしてよいという資格ではない。ペットシッターという仕事に、医療の線を越える許可は付いていない。
新北市動保処は、病気のペットの世話を人に頼むときは、まず動物病院で適切な方法を確認してほしいと呼びかけている。
同じ猫に、同じ針を刺す。罰金が生まれるのは、刺したのが飼い主ではないときだけだ。
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