10/13 22:50 更新

お風呂は、ご遠慮
いただいております

――日本では、旅館やホテルの約56%が入浴をお断り

写真はイメージ Photo by Leo Okuyama on Unsplash

10/13 13:10 / 発信国:アメリカ

光でオン・オフできる入れ墨をアメリカの大学が作った 狙いの一つは、がん治療の印だ

紫外線を2〜3秒当てると、肌に青やマゼンタ、黄色が浮かび上がる。明るい白色LEDを当てると、また消えていく。米コロラド大学ボルダー校のカーソン・ブランス氏らが、そんな入れ墨の色素「PhotoTat」を作った。2026年10月9日、学術誌Matter & Lightで発表した。

ブランス氏は自分の脚で試している。黒い線で魚の鱗の模様を描き、その中をこの色素で塗った。光の当て方で、鱗が赤やオレンジ、青に変わる。本人はそれを、魔法の人魚の鱗のようだと話している。

紫外線でオン、白色LEDでオフ

仕組みはこうだ。PMMAでできた、とても小さな球に、光で色が変わる色素を閉じ込める。色素は青、マゼンタ、黄の3種類。混ぜれば、色のついた絵になる。

普段は、ほとんど見えない。365ナノメートルの紫外線を当てると、2〜3秒で色が出る。放っておいても数時間で薄れるし、明るい白色LEDを当てれば、もっと早く消える。ブランス氏は「PhotoTatはスイッチのようなものだ。紫外線でオンにできるが、おばあちゃんの家に行くときはオフに戻せる」と話した(英語での発言を訳した)。

ここが、ややこしい。外の日差しにも紫外線は入っている。屋外では、隠しておきたいのに色が中途半端に出てしまうという。消したままにするには、日焼け止めが要る。

日本では、旅館やホテルの約56%が「お断り」

2015年に観光庁が全国の旅館やホテルに聞いた調査では、入れ墨のある客の入浴を「お断りしている」施設が約56%だった。「受け入れている」が約31%、シールで隠すなどの条件付きが約13%。3,768施設に送って、581施設が答えた調査だ。

病院の治療室に置かれた機器
写真はイメージ Photo by Brian Wangenheim on Unsplash
日本の温泉の湯船
写真はイメージ Photo by Nguyen TP Hai on Unsplash

観光庁は2016年3月16日、宿泊業の団体に文書を出した。外国人の入れ墨には、宗教や文化、ファッションといった理由がある。入れ墨があることだけを理由に入浴を断るのは適切ではない、という内容だ。シールで覆う、家族連れの少ない時間帯を勧める、貸切風呂に案内する、といった対応例も並べた。

その「シールで隠す」を、色素のほうが引き受けられないか。室内で白い光を当てれば消え、外では日差しで色が出る。日本の風呂の事情に、よくはまる技術に見える。ここは筆者の見方だ。

ただし、鱗の輪郭を描いた黒い線は、普通の入れ墨と同じで消えない。色が消えている間も、ブランス氏の脚には黒い線が残る。今ある入れ墨が、光で消せるようになるわけでもない。

では、入れ墨を嫌うのは日本だけの話なのか。ブランス氏は「科学でも多くの文化でも、身体装飾には偏見がある」と話している。

作った理由は、おしゃれだけではない

ブランス氏が挙げる使い道には、おしゃれと関係のないものがある。放射線治療だ。

位置を合わせるために入れた点は、治療が終わっても消えない。ブランス氏の話では、見た目が良くない。しかも、つらい治療の記憶を体に残すことになる。PhotoTatなら、診察のときだけ見えるようにして、あとは見えないままにできるという。

ただし、入れ墨の店で頼めるようにはなっていない。人にとって安全かどうかも、まだ分かっていない。毒性や無菌性、純度の試験はこれからだ。人の皮膚で試したのは、ブランス氏の脚一つだけ。その脚では、入れてから1.4〜2.2年たっても、まだ光で色が出たり消えたりしている。

出典

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