10/9 17:49 更新

ここの言葉は分からん。
オレが知ってる言葉で話せ

――ある配送センターの責任者が、従業員に

写真はイメージ Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash

10/8 17:42 / 発信国:インド

インドの倉庫で「ヒンディー語を覚えてから来い」、警察が動いた

「おれはこの土地の言葉が分からない。今日から指示は全部、よその言葉でやる。覚えられないなら辞めてくれ」。ある配送センターで、新しく来た責任者がこう言ったとする。従業員が「ここは地元ですよ」と返しても、答えは「それがどうした」。

これは、日本の職場に置き換えたたとえ話だ。実際の舞台は、インド南部カルナータカ州の州都ベンガルール。出前アプリ大手ゾマトが借りている倉庫で、10月の初めに起きた。倉庫の責任者が従業員に「ヒンディー語を覚えてから来い」と言い、その動画が広まった。本人は短い時間、警察に身柄を預かられた。そのあと、カンナダ語で謝った。

「ヒンディー語を覚えてから来い」

動画に映っていたのは、シフト責任者の男性が従業員に話す場面だ。「私はカンナダ語が分からない。ヒンディー語で話す。ここで働くなら、ヒンディー語を覚えてから来い。辞めたいなら、私は構わない」。従業員が「ここはカルナータカ州だ」と言うと、男性は「それがどうした、私はヒンディー語しか話さない」と答えた。

カンナダ語は、この州の公用語だ。方言を直せという話ではない。職場の指示を別の言葉でやる、と言われたのだ。

現地の報道によれば、動画は10月5日にSNSで共有され、広まった。カンナダ語を守る活動をする人たちが倉庫の前に集まり、男性の解任と処分を求めた。倉庫のある地区のマダナヤカナハリ警察に申し立てが出された。警察は、抗議の場の混乱を防ぐため、男性の身柄を短い時間預かった。告訴を待たずに自分から事件として受け付けた、と複数の地元報道は書いている。起訴されたという報道は、読めた出典にはなかった。

ヒンディー語を求めた人も、ヒンディー語の土地の人ではない

街を走る配達用のバイク
写真はイメージ Photo by Sergey Beschastnykh on Unsplash

ここが、ややこしい。現地の報道によれば、この責任者はアーンドラ・プラデーシュ州の出身だ。この州の公用語はテルグ語で、ヒンディー語ではない。本人の母語までは、読めた出典では分からなかった。

では、なぜヒンディー語なのか。インドには、憲法が定めた「国語」がない。連邦政府が事務に使う公用語はヒンディー語と英語の2つで、州は公用語を自分で決められる。ベンガルールには、インド各地から来て働く人が多い。

カルナータカ州では、ヒンディー語を押しつけられることへの反発が前からある。2017年には、ベンガルールの地下鉄の案内表示がカンナダ語・英語・ヒンディー語の3つになり、反対運動が起きた。駅の前で抗議があり、ネットでも「うちの地下鉄に、ヒンディー語は要らない」という意味の合言葉が広まった。表示は、そのあと見直された。

日本に置き換えると、これは方言をめぐるいさかいではない。社内の共通語をどれにするか、という話に近い。そこに、州の公用語という重みが乗っている——と筆者は読んだ。

ネットの評判

動画が回ると、「カンナダ語を侮辱している」という批判が集まった。カルナータカ州の職場でヒンディー語を使わせるのはおかしい、という声が多かったと、現地の報道は伝えている。管理職に地元の文化を学ばせる研修をやれ、という意見も出た。では、会社はどうしたのか。ゾマトの説明は、読めた出典には出てこなかった。

男性は、カンナダ語で謝る動画を出した。地元の人の気持ちを傷つける気はなかった、同じことは繰り返さない、と話した。反応は割れた。もういいという声と、会社がもっと重い処分を出すべきだという声。

「カンナダ語は分からない」。そう言い切った男性は、カンナダ語で謝った。

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出典

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