10/6 22:19 更新

一言で言えば
おいしい

――ある俳優が、福島の酒を評して

写真はイメージ 撮影 Yusuke Kawasaki/CC BY 2.0(ウィキメディア・コモンズ)

10/5 22:29 / 発信国:日本

酒を「初夏の微笑み」と言い表すAI、福島の日本酒売り場に入る

東京・中央区の福島県物産館「日本橋ふくしま館 MIDETTE」に10月3日、日本酒の試飲機「のまっせ」とAI診断システム「KAORIUM(カオリウム)」が入った。タブレットで味わいや気分の項目を選ぶと、県産の20銘柄からおすすめが出る。館内の「ふくしまの酒」コーナーには約500種類が並ぶ。

式には、いわき市出身で「ふくしまの酒マイスター」を務める俳優の神尾佑が出席した。神尾は県産酒を「一言で言えばおいしい。自信を持って福島の酒はおいしいです!」と評し、そのうえで「まだまだ知られていない、浸透していないことが悔しい」とも語っている。

なぜ機械に選ばせるのか。2日前に同じ機器を入れた福島市の県観光物産館で、福島県県産品振興戦略課の影山真紀主幹は「若い方とか日本酒に詳しくない方は選びにくいかなと思いましたので」と説明している。

返ってくるのは「ライチ」や「初夏の微笑み」

作ったのはSCENTMATIC(セントマティック)。日本酒版「KAORIUM for Sake」は、ネット上の言葉の表現と人の感じ方を学ばせたAIに、1万を超える日本酒の風味・感性データと酒ソムリエの感性を重ねたもの。同社はそう説明している。

器に盛られたライチ
写真はイメージ Photo by Jing Bo Wang on Unsplash

画面に出るのは、精米歩合でも産地でもない。日本酒専門サイト「SAKETIMES」の取材記事によれば、「ふくよか」「すずしげ」「あたたかみ」の3要素が円の大きさで示される。その周りに「ライチ」などの食べ物の名前や、「風にゆれるヤシの木」「初夏の微笑み」といった言葉が並ぶ。ただし、日本橋ふくしま館の端末に同じ言葉が出るかは、出典では確かめられなかった。

「選んでくれる」より先に起きること

この機械は、好みの酒を当ててくれるAIとして報じられている。ただ、開発元の説明では順番が逆だ。SCENTMATIC代表の栗栖俊治は「『好き・嫌い』のようなあいまいな感覚でも、キーワードで示すことで、その気持ちの輪郭や自分の軸をはっきりと捉えることができます」と話している。選んでもらう前に、自分の好みを人に言える言葉が手に入る、という順番である。栗栖は「日本酒に詳しい人も、日本酒初心者も、立場に関係なく対等に感想を言い合って会話が弾むことを期待しています」とも述べている。

監修を務めた酒ソムリエの赤星慶太は、当初「『AI=答えを決めつけるもの』だと思っていたんです」と否定的だった。実際に話を聞き「僕の考えのその先を行くものであることに気付かされました」という。

ネットの評判

今回の導入そのものへの大きな賛否は、確かめられた範囲では見当たらない。車好きの投稿サイト「みんカラ」には10月1日付で、福島も「巻き返しの時です」とする投稿があった。KAORIUMを試した個人ブログは、味を食べ物に例える点を「とてもイメージしやすくて良いなと思いました」と書く一方、「まだまだ人間の方が勝っている部分は多いですね」とも記している。

言葉が付くと、売れる

言葉が付いた効果は、数字にも出ている。「KAORIUM for Sake」を2週間入れた店舗では、日本酒の注文数が23%、客単価が16%上がったという。セントマティックによれば、嗜好データを売り場づくりに生かした店舗では、上位に来た銘柄の売上本数が8.4倍になった。酒の中身は何も変えず、言葉を付け替えただけである。

出典

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