10/9 17:49 更新

アクタウ港?貨物満載にすると入港できないんですよ(泣

――ある港の船長が、荷主に

写真はイメージ Photo by Tícia Vesztergombi on Unsplash

10/8 15:39 / 発信国:カザフスタン

水位低下でカスピ海に島が出現。そして港を掘るのに1億7900万ドル

近所の湖の水が引いて、桟橋の先に砂の島ができたとする。歩いて渡ってみたら、イノシシの足跡がついていた。

これは日本の話ではない。舞台はカスピ海

ここまではたとえ話だ。実際の舞台は、カザフスタンの沖のカスピ海。欧州の放送局ユーロニュースが10月7日に伝えた。クラーリー島の近くで、新しい島が見つかった。気づいたのは、地元の環境活動家ダニヤル・アキムジャノフさんたち。空から見て回っていたときだった。

この4、5年に現れた島には、長さ約1キロ、幅200〜300メートルのものもある。もう生き物が渡っている。アキムジャノフさんはイノシシを見かけた。冬には、氷の上をオオカミが歩いてくるという。

水位の数字はこうだ。カザフスタン側は、1996年の標高マイナス26.82メートルから、2025年にマイナス29.27メートルまで下がった。30年で2.45メートル、1年あたり8〜9センチ。2026年7月はマイナス29.42メートルで、観測を始めてから最も低い。2000年から2025年の間に、調べた北東部だけで1万6384平方キロの水面が消えた。本州でいちばん広い岩手県(約1万5000平方キロ)より広い。

なぜ水が減るのか

カスピ海は海とつながっていない。だから、話は意外と単純だ。ユーロニュースに答えた研究者のシファン・コリチェ博士は、「単純な水の収支のようなものだ」と話している(英語記事からの訳)。入ってくるのは川の水と雨。出ていくのは蒸発だけだ。

ダムにせき止められた川
写真はイメージ Photo by Anudeep Panja on Unsplash

その入ってくる水の8割を、ロシアを流れるボルガ川が運んでくる。川にはダムが並び、流域では農業用の水も取られている。一方で、出ていく側は増えた。カザフスタンの英字紙アスタナ・タイムズによると、カスピ海の周りは1976年から2024年まで、10年あたり0.51度のペースで暖まってきた。世界平均の0.19度の3倍近い。暖かくなれば水は蒸発する。しかも雨は減っている。

入る水が細り、出る水が増える。それが30年続いた結果が、あの島だ。

では、そこに住む人はどうなる

まず港だ。カザフスタンのアクタウ港の水深は、平均4.5メートル。船を動かすには6.5〜7メートルが要る(アスタナ・タイムズ)。船は荷を減らすしかない。タンカーは3100トン、穀物船は1200トンまで。対岸の海運会社の責任者は、カザフスタンからの荷を満載の8割しか積めないフェリーがあると話した(タイムズ・オブ・セントラルアジア)。

貨物船とクレーンのある港
写真はイメージ Photo by Martti Salmi on Unsplash

この港は、中国とヨーロッパを結ぶ中央回廊の通り道だ。2024年の貨物量は450万トン。それが、水の浅さに引っかかっている。

では、だれが払うのか。アクタウ港のしゅんせつに3980万ドル、岸壁の作り直しに6520万ドル。クリク港に5680万ドル、バウチノ港に1760万ドル。合わせて約1億7900万ドル(タイムズ・オブ・セントラルアジア)。毎年のしゅんせつ代も、アクタウ港だけで約4億テンゲ(約78万ドル)かかる。

暮らしに近い話もある。アクタウの町は、飲み水、暖房、発電に使う水を、カスピ海からの取水に頼っている。干上がった海底からは、塩とほこりが風で舞う。油の残りや重金属が混じり、呼吸器の病気が増える心配がある。漁も打撃を受けた。しゅんせつが魚とアザラシの餌場を荒らしたという。ここまではアスタナ・タイムズが伝えている話だ。カスピカイアザラシが上陸して子を育てる島は、1995年から15分の1以下に減った(ユーロニュース)。

この先は、どうなるのか。ユーロニュースが紹介した研究には、今世紀末までに最大8メートル下がる筋書きもある。5メートル下がるだけで、北部の海底が約7万7000平方キロ、顔を出す。北海道(約8万3000平方キロ)に近い広さだ。

同じ中央アジアに、先に起きた例がある。アラル海だ。アメリカ航空宇宙局(NASA)の解説は、干上がった湖底から農薬を含んだほこりが舞い上がり、公衆衛生の問題になったと書いている。塩を含んだほこりは畑に降り、土を傷めた。カスピ海が同じ道をたどるかは、まだ分からない。はっきりしているのは、海が2.45メートル下がった分を掘り直すために、カザフスタンが港の工事に約1億7900万ドルを使っていることだ。

出典

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