10/9 17:49 更新

『いま、どこ?』の返事が、
嘘だった

――ある工場が、着かないトラックの運転手に

写真はイメージ Photo by Avinash Kumar on Unsplash

10/8 11:52 / 発信国:南アフリカ

小麦108トンが消えた南アフリカ、追うのは警察ではない

港に着いた小麦を、同じ州の内陸にある製粉工場まで運ぶ。大型トラック3台、合わせて108トン。夜のうちに港を出た。朝になって、工場から運転手に電話が入る。いま、どこですか。運転手は場所を答えた。だが、その場所にトラックはいなかった。それきり、電話もメッセージも返ってこなくなった。

これは日本の話ではない。南アフリカで起きた

舞台は南アフリカだ。2026年10月3日の未明、ダーバン港を出た3台のトラックが、約76キロ離れたピーターマリッツバーグの工場に着かなかった。地元紙ウィットネスなどが10月6日に伝えた。

積んでいたのは小麦108トン。イヴェコ、MAN、デーウーの3台が、それぞれ36トンほどを運んでいた。金額にして約60万ランド、日本円で580万円ほどだ。

ダーバン港が1年に扱う貨物は、最大3,140万トン。消えた108トンは、この港が2分ほどで動かす量にすぎない。

運転手は3人いた。誤った位置を伝えたあと、メッセージにも電話にも応じなくなった。3人のうち2人は、その会社で配送するのが初めてだったという。

なぜ消えたのか。調べている側は、すでに3人を容疑者として特定している。外国籍が1人、南アフリカ国籍が2人。映像、写真、身元の情報、車両の登録番号まで持っているが、公開の許可を待っている段階だという。小麦の行き先は、まだ分かっていない。なぜ運ぶはずのものを持ち去ったのか、その理由は出典では確かめられなかった。

追っているのは、警察ではない

ここが、日本と大きく違う。この件を調べ、情報提供を呼びかけているのはRUSA(リアクション・ユニット・サウスアフリカ)。南アフリカの警察ではない。クワズール・ナタール州を拠点にする民間の警備会社で、武装しての緊急出動や警備、救急を請け負っている。発表したのは、この会社のプレム・バルラム氏だ。

南アフリカでは、トラックが積荷ごと消えるのが珍しくない。南アフリカ警察の統計では、2025年10〜12月の3か月に、ハイジャックされたトラックが349台あった。前年の同じ3か月は413台。64台、15.5%減っている。

減ったのだから、よくなっているのか。道路貨物協会のギャビン・ケリー氏は、この数字をそのまま受け取るなと話した。「統計は届け出に頼っている」。そのうえで「もう事件を届け出ない業者がたくさんいる。実際に動いてもらえるという期待を捨ててしまった」と言った。警察が役割をこなせるという信頼を、業界は長いあいだ失ってきた、とも話した。

狙われる積荷の筆頭は、食品と飲料、酒だ。保険仲介のエーオン南アフリカがまとめている。小麦が消えたのは、南アフリカでは意外な話ではない。

日本では、1年で944件

では、日本はどうか。警察庁の統計をまとめたNX総合研究所によると、2024年に盗まれた貨物自動車は944件だった。1日あたり2.5件ほどになる。

倉庫の荷積み場
写真はイメージ Photo by Matthew Jackson on Unsplash

数だけなら日本のほうが多い。だが、中身が違う。日本の944件は、車庫や路上に止まっているトラックが盗まれたものが中心だ。南アフリカの349台は、運転手が乗って走っているところを襲われたものだ。

日本で貨物自動車が1年に944件盗まれるあいだ、南アフリカでは走行中のトラックが3か月で349台奪われている。

出典

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