10/6 22:19 更新

あとでまとめてやるから、
置いといて

――唐揚げ工場が、それをやめた

写真はイメージ Photo by HONG FENG on Unsplash

10/6 15:41 / 発信国:日本

鶏肉をためるのをやめた唐揚げ工場 元トヨタ生技が挙げた4つの代償

唐揚げ用の鶏肉を切る工程で、変えたのは1点だけだった。ボウル1杯分を切り終えた作業者が、その都度、自分で次の工程まで運ぶ。これだけで、鶏肉の歩留まり(原料のうち製品になる割合)が上がった。トヨタ自動車で16年間、生産技術と現場改善に携わった田代勝良氏(工場改善サービス代表取締役)が、ある食品工場で行った改善である。技術情報サイトMONOistの連載「元トヨタ生技が見た食品工場のなぜ」第4回(2026年9月28日公開)が、4つの改善事例の1つ目として紹介した。

6人が切り、1人が受けていた

この工場では、唐揚げ用に一口大へ切り分ける作業(ぶつ切り)を6人の女性作業者が担い、粉付けと冷凍(トンネルフリーザーへの投入)を男性作業者1人が担っていた。切る側のほうが速い。追いつかない分は、フリーザーの手前に積まれていく。その量が、1〜2時間分に達していた。

まな板の上で切り分けられた生の鶏肉
写真はイメージ Photo by Cristian Guillen on Unsplash

やめたのは、この積む作業である。記事が「作ったら手渡し」と呼ぶやり方に変えると、切ったそばから冷凍されるようになった。滞留は消え、歩留まりも、揚げた後の肉汁も上がったと記事は書いている。ただし、何パーセント上がったのかは記事に示されていない。改善を手がけた本人による寄稿であることも、読む側は押さえておきたい。

ためることの4つの代償

積まれていた1〜2時間のあいだに、何が起きていたか。記事は4つ挙げる。

積み重ねられた樹脂製の箱
写真はイメージ Photo by Kelvin Zyteng on Unsplash

1つ目は、入ってはいけないものが入る危険である。待っている時間が長いほど、異物が混じる機会は増える。

2つ目は、肉から水分が抜けることだ。抜けた水分(ドリップ)は製品にならないので、原料のうち売り物になる割合が下がる。揚げたときの肉汁も減る。

3つ目は、入れ物の数である。待たせる分だけ、番重(食品工場で使う浅い箱型の容器)が要る。箱が増えれば、洗う手間と、どの箱に何が入っているかを管理する手間が増える。

4つ目は、残りの3つと毛色が違う。粉を付ける段で、切り残しのある肉が見つかる。だが、積まれた山の中からでは、それを切った人も、切った時刻も分からない。切った本人に伝わらないので、直せない。

この4つは、鶏肉でなくても起きる。机に積んだ書類の山も、積んだ時点では1枚も片づいていない。それでも場所を取り、ほかの紙と混ざり、どれを自分がいつ書いたかが分からなくなる。台所の作り置きも、ためた分だけ容器がふさがり、洗う数が増える。机の山の高さと、冷蔵庫の容器の数。この2つを数えるだけで、4つのうちどれが起きているかは見当がつく。

ネットの評判

この記事は、はてなブックマークの人気エントリーに入った。コメントで目立つのは3つの方向だ。工程ごとの速さの差に注目する点が、小説『ザ・ゴール』やボトルネックの考え方と重なるという声。改善すると働く側の負担が増える、という声。もう一つは、速くなって人手が浮いたとき、その人はどこへ行くのかという疑問だ。

ためるのをやめた結果、この工程で使う番重は、1枚も要らなくなった。

出典

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