10/13 23:45 更新

布一枚で、
列車を止めた

――インドの森の職員が

写真はイメージ Photo by Alehandra on Unsplash

10/13 13:54 / 発信国:インド

インドで象70頭を救った赤い布。でも線路は象の通り道の上にある

インド東部の西ベンガル州で、森林局の職員が赤い布を大きく振った。線路の上を、70頭を超える象の群れが渡っていたからだ。合図を送った相手は、近づいてくるSikkim Mahananda Expressという列車だった。布を振ったのはAkash Kerketta氏。列車はゆっくりになり、やがて止まった。象たちは、そのあいだに線路を渡っていった。人も象も、けがをしたとは報じられていない。

線路の両側が、象の通り道

場所は、西ベンガル州北部のBagdograとNaxalbariの間。Kerketta氏はKurseong管区の職員だ。現地の報道によると、群れはNaxalbariのTukriajharという一帯から、Bagdograの森へ向かう途中だった。線路と国道を渡って、森に入ったという。群れには子象も混じっていた。

森の中を通る線路
写真はイメージ Photo by Antoine Beauvillain on Unsplash

映像を広めたのは、インド森林局の職員Parveen Kaswan氏。10月11日の投稿に「This is how heroes look like in real life」と書いた。本物のヒーローはこういう姿だ、という意味だ。動画の表示回数は、3万回を超えている。

なぜ、70頭もの象が線路の上にいたのか。この一帯の森が野生動物回廊として知られていて、そこに鉄道が重なっているからだ。象は決まった道を通る。線路は、その道を横切っている。

「救った255頭」と、死んだ81頭

この地域の路線を受け持つ北東辺境鉄道は、10月4日に一つの数字を出した。2026年1月から9月までに、列車とぶつかりそうになった象255頭を救った、というものだ。広報責任者のKapinjal Kishore Sharma氏が話した。

いい話に聞こえる。ただ、裏返せば、9か月のあいだに、それだけの数の象が列車の前まで来ていたということでもある。

鉄道の側も手は打っている。音をとらえる装置で線路のそばの象の動きを見つけ、すぐに知らせを出すAIの仕組み。象が出たと報告された区間での、一時的な速度制限と夜間の速度制限。ミツバチの羽音を聞かせて象を遠ざけるPlan Bee。線路の下をくぐる通路の建設。それでも、死ぬ象はいる。

2025年7月28日、環境担当国務相のKirti Vardhan Singh氏は、過去5年間に81頭が列車事故で死んだと国会で答えた。先に手を入れる区間として、14の州の77か所、約2,000キロが選ばれている。

仕組みが整えば、人が布を振らなくて済むのか。そう言い切れない例がある。2025年7月18日の未明、西ベンガル州南部のジャルグラム県で、Jan Shatabdi Expressが10頭ほどの群れに突っ込み、3頭が死んだ。うち2頭は子象だ。地元の森林局長Umar Imam氏は、前の夜の11時ごろに象の動きに気づき、当番のレンジャーに鉄道へ伝えるよう指示していた。それでも間に合わなかった。

もっと前にも例がある。2013年11月13日、ジャルパイグリ県のチャプラマリ野生生物保護区で、列車が40〜50頭の群れに時速80キロほどで突っ込み、7頭が死んだ。この区間の決まりは、時速40キロだった。

ネットの評判

Kaswan氏が出した動画には、Kerketta氏のとっさの動きを褒める声が多い。インドのニュースサイトasianetnewsは、森林局の職員と鉄道の職員の連携を褒める声も出ていると伝えている。

北東辺境鉄道は、255頭を救った手だてとして、AIや速度制限と並んで森林局との連携を挙げている。10月のBagdograで、その連携を支えた道具は、赤い布一枚だった。

出典

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