10/13 22:50 更新

あの雨の朝、通り過ぎなかった人がいる

写真はイメージ Photo by Rebecca Campbell on Unsplash

10/12 13:43 / 発信国:日本

大雨で拾われた子猫に29万いいね でも、写真に写っているのは両端だけだ

大雨の日、駐車場の柱の陰にうずくまっていた子猫が保護された。名前は福ちゃん。保護したのは、Xの「そ」さん(@snnnov)だ。拾った日の写真2枚と、3か月後の1枚を並べて投稿したところ、いいねが約29万件付いた。

表示回数は、記事によって数字が違う。猫の情報サイト・ねこちゃんホンポ(2026年10月10日更新、執筆・しおり)は「400万回以上」、BuzzFeed Japan(2026年10月11日)は「214万表示」と書いている。あとから出た記事の方が少ない。福ちゃん専用のXアカウント(@fukuchaama)もある。

そさんが福ちゃんを見つけたのは、朝の通勤の途中だった。「近寄ると向こうから足元に寄ってきました」「大雨の日だったため毛が濡れていたため保護しない選択肢はありませんでした」(BuzzFeed Japan、2026年10月11日)

拾った日の2枚と、3か月後の1枚。そのあいだは90日ほどある。写真に写っているのは、両端だけだ。

正確な日数は、読んだ記事に出ていない。そさんの「3ヶ月後」から置いた、おおよその数だ。

先に、ない物を書いておく。福ちゃんの保護日、拾ったときの体重、体重の推移、通院や検査の記録、かかったお金は、確認したどの記事にも出ていない。元のX投稿そのものと専用アカウントも、こちらでは開けなかった。90日の一次資料になり得るのはそこだけだが、中身は見ていない。だから、ここから追うのは子猫一般の90日だ。

0日目 病院でやることは、だいたい決まっている

拾ったその日にすることは、獣医師の説明として公開されている。たかつきユア動物病院(院長・木村獣医師)の監修ページは、「保護初日に行けるならすぐに」病院へ連れて行くよう書く。そこでやるのは、体を見る身体検査、半日以内の新しい便を持っていく検査、それに駆虫だ。週齢の見当も、同じページに出ている。

動物病院で子猫を診てもらう様子(イメージ写真)
写真はイメージ Photo by Judy Beth Morris on Unsplash

家での置き方も具体的だ。人が多少「むわっと感じる」室温にして、毛布を入れた段ボールに湯たんぽを置く。

気をつけるものは3つ。低体温、脱水、低血糖だ。「触ったり持ったりしても鳴かずに寝ているような顔つきをしている場合は低体温や脱水や低血糖を起こしている可能性があります」。ノミがたくさん付いている子猫は「ノミ性貧血(子猫は死に至ります)」の危険があるという。

福ちゃんは、そさんの足元まで自分で歩いてきたという。この説明と重ねれば、鳴かずに寝ている側ではなかったと読める。ただ、その朝の体温がどうだったかは、どの記事にも出ていない。

1週目から8週目 1回の検査では、決まらない

ここが、ややこしい。猫エイズと猫白血病のウイルス検査は、1回の採血で白黒が付くものではない。たかつきユア動物病院のページは、理想を「4-6ヶ月齢以降に猫エイズや猫白血病のウイルス検査をして陰性を確認」すること、拾った時点で調べても「その時点での検査精度は低めなので、獣医師から2ヶ月後の再検査を指示されると思います」と書いている。

注射も、この時期から始まる。アイペット損害保険のページ(獣医師・鷺島祥子監修、2026年4月23日更新)によると、混合ワクチンの1回目は生後6〜8週ごろ。体重の目安は、ヒルズのページで生後1か月が約400〜500g、2か月が約700g〜1.0kgだ。

12週目、16週目 注射はもう1回、そして追加

2回目は、1回目の2〜4週間後。8週齢で打った場合は12週齢が目安になる。さらに「世界小動物獣医師会による『犬と猫のワクチネーションガイドライン』では、さらに16週齢ごろに追加接種することが推奨されています」(アイペット損害保険)。注射は2回で終わりではない。

生後3か月の体重の目安は約1.0〜1.5kg(ヒルズ)。写真で目を引くのは顔つきの変わりようだが、この90日に積まれたのは数グラムの方だ。ヒルズのページも、子猫の体重でいちばん大事なのは順調に増えているかどうかだと書いている。

90日目 その1枚が撮れない子もいる

2021年8月13日午後2時ごろ、大阪府八尾市の住宅街。道路の端でびしょ濡れになって震えていた生後3週ほどの子猫が保護された。体重は280グラムくらい、目はうっすらとしか開いていなかった(神戸新聞NEXT、2021年8月19日)。猫を飼ったことのない人が、放っておけずに連れ帰ったという。名前は、雨から取って「あめちゃん」。

同じあめちゃんを、ねこナビは260gと書く。保護当日は体を温め、ノミを落とし、子猫用ミルクを与えた。1か月後に約1kg。同じ1匹でも、媒体によって280gと260gで食い違う。福ちゃんの表示回数が400万回と214万表示で違うのと、同じことだ。

越えられない子もいる。2022年8月の猛暑日に保護された子猫「はっさくちゃん」は、「栄養失調で骨が浮き出るほど痩せていて、重症の猫風邪をひいて衰弱していた」。入院して治療を受け、愛知県のHさんが迎えた(神戸新聞NEXT、2022年11月27日)。この記事は会員向けで、こちらでは本文を開けていない。

数字もある。動物プロダクションSCIENCE FACTORYの記事(2025年8月23日)に、長崎の大学構内の調査で「生後8か月までに生き残った子猫はわずか43%」という紹介が出ている。ただ、論文名も研究者名も書かれていない。孫引きとして読むしかない数字だ。

福ちゃんの投稿に付いた声は、こうだ。「まじで『お姫様』がピッタリすぎます。麗しい」「シンデレラみたい。(笑)」「めちゃくちゃ大きくなってるw」(ねこちゃんホンポ)。BuzzFeed Japanが紹介したのは「美猫すぎてびっくりした」。読んだ記事に出ていた声は、どれも3か月後の姿に向いていた。90日の中身に触れたものは、なかった。

そさん本人の言葉は、少し違う。「最初の頃は猫風邪の影響か目の様子(見た目の面)が少しおかしく、それでも元気でいてくれれば良いかなという気持ちで育てていました」「とにかく見た目はどうであれ健康で本人(本猫)が幸せに暮らしてくれたら良いなという気持ちでした」(BuzzFeed Japan)

ひとつ、分けて書いておく。姫路市のページ「子猫を見つけたとき」は、拾う側にブレーキをかけている。「可愛さに惹かれて安易に手を出すのではなく、最期まで面倒を見る覚悟で臨んでください。自信がない場合は、保護しないことも優しさです。」ぐったりして動けない場合は動物管理センターに相談するように、とも書いてある。これは、そさんへの話ではない。大雨で濡れていた福ちゃんは急ぐ側だと筆者は読むが、個別の判断までは、このページに書かれていない。これから拾う人に向けた注意として読んでほしい。

次に雨の中で子猫を見つけた人のために、90日の中身を控えておく。まず温かくする。早めに動物病院へ連れて行く。身体検査と、半日以内の便を持っていく検便、月齢に合わせた駆虫。猫エイズと猫白血病のウイルス検査は落ち着いてから、再検査もある。注射は2回、さらに16週齢ごろの追加。体重は、増えているかを見る。

成猫と呼ばれるのは生後12か月ごろからだという(ヒルズ)。90日は、その4分の1にあたる。

3か月後の1枚が撮れたのは、あの雨の朝、そさんが通り過ぎなかったからだ。

出典

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