10/6 22:19 更新

『人間だとただの変態なのに』

柴犬の至近距離動画を投稿した本人の言葉

写真はイメージ Photo by Samuel Sylf on Unsplash

10/6 18:22 / 発信国:日本

家族と恋人の45センチに、柴犬のハァハァが無断で入ってきた

2026年10月2日、Xに柴犬の動画が投稿された。カメラのすぐ前まで顔を寄せた柴犬が、「ハァハァ」と息をしている。投稿したのはノリきなコ(@999Ein)。添えた文は「柴犬の接近ハァハァに需要があることがわかりました!」で始まり、「人間だとただの変態なのに、わんこだと癒される不思議😂」と続く。

返信には「近い近い」と書く人がいて、同じ欄に「ありがとうございます」と書く人がいる。投稿と返信をまとめたページ(Togetter)の見出しは「近すぎるけど犬がやるとご褒美だった」。ページは10月5日に公開され、10月6日時点の表示は約1万500回。返信をたどっても、近すぎると苦情を言う人は見当たらない。

0センチから45センチは、家族と恋人の距離

人と人の間合いには、一応の目安がある。文化人類学者エドワード・D・ホールは、他人に入られると不快になる空間を4つに区切った。いちばん内側の0〜45センチが「密接距離」で、ここに入れるのは家族や恋人などごく親しい相手に限られる。友人なら45〜120センチ、仕事相手なら1.2〜3.5メートルが目安になる(日本の人事部)。柴犬の鼻先は、どう見てもいちばん内側にいる。

混み合った通勤電車の車内
写真はイメージ Photo by Francesco Ungaro on Unsplash

返信は、褒めている点がおかしい。「暖かい空気がヘコヘコ当たってくる感覚がする」「個人的に最後の「ふんっ」が好きです」「サウンドオンでご覧ください」。息の温度、鼻を鳴らす音、音量の推奨。人間がやれば一つも加点されない要素が、全部加点されている。「フンスも足りません!!我にフンスを!!」と増量を求める人までいた。

しかも、柴犬の側から見れば、画面の向こうにいるのは家族でも恋人でもない。よその家の犬の鼻息を、よその人が浴びて礼を言っている。

なぜ犬だと許されるのか。答えは出ていない。関係しそうな研究ならある。麻布大学の永澤美保さんと菊水健史さんらは、家庭犬と飼い主30組に実験室で30分過ごしてもらい、その前と後に双方の尿を採ってオキシトシンの濃度を測った。犬が飼い主をよく見つめた組では、犬にも飼い主にも濃度の上昇が出た(Science、2015年)。返信にも「オキシトシンMAX」と書いた人がいる。ただしこれは自分の犬と向き合ったときの話で、よその犬の動画を見て同じことが起きるかは、この研究では分からない。

分かっているのは、距離の基準が相手によって動く、ということだけだ。無断で密接距離に入ってきた相手に「ありがとうございます」と返した人が、このページには4人いる。満員電車で同じ距離に立たれて、礼を言う人はたぶんいない。

出典

よく読まれている記事

こちらの記事も

← 一覧へ戻る