10/9 17:49 更新

かわいそう、では
済まされない

――ある市長が、市外からの電話に

写真はイメージ Photo by Julian Hochgesang on Unsplash

10/9 14:59 / 発信国:日本

クマを撃った舞鶴市への456件、多くはクマのいない土地から

2026年9月3日の夕方、京都府舞鶴市大波下の民家から110番があった。「クマが縁の下にいる」。市は京都府警や京都府と話し合い、緊急銃猟を決めた。市が委託した業者が麻酔銃を撃ち、午後11時過ぎ、ツキノワグマ2頭が殺処分された。雌の成獣が25キロ、雄の幼獣が5キロ。親子とみられる。けが人は出なかった。

9月16日までに、市役所には電話やメールなどで456件の問い合わせが届いた。鴨田秋津市長によると、そのうち約9割が誹謗中傷だった。

「死んでくれ」と言われたのは、住民を守った職員

苦情には、こんな言葉が並ぶ。「クマより能力的に劣っている」「死んでくれ」「お前ら頭が悪い」。市長は「誹謗中傷、中には脅迫めいたものが多かった」と話した。職員は住民の命を守った、とも話している。

市長はSNSにも書いた。「土日挟んで様子を見ましたが、昨日も『職員は死んだほうが良い』『職員の親族もろくでもない』などの電話がありました。これまでの電話は全て録音してあります」。市はカスタマーハラスメントの基本方針に沿って対応すると公表した。

あの夜、現場で動いたのは専門業者と警察、市の職員など約30人。近くの民家に屋内退避を頼み、道路を規制したうえで撃った。終わったのは午後11時1分。クマは5月下旬から周りの山際で見られ、8月下旬には集落の中に入って、近所の家の柿を食べていた。

電話は、その作業の最中にもかかってきた。「なぜ殺すのか」「開示請求するぞ」。市長は「市役所本部と現場及びマスコミとの連絡に支障をきたしました」と書いている。

電話の多くは、クマのいない土地から

ここが、この話のいちばん引っかかるところだ。市長は苦情について、「ほとんどが府外、ましてやクマが生息していないとされる地域から」だったと指摘している。

山並みと森
写真はイメージ Photo by HKTreks on Unsplash

クマのいない土地とは、どこか。九州では1957年以降ツキノワグマが確認されず、環境省は2012年に絶滅と判断した。四国は剣山の周りに約30頭。千葉県にもいない。房総半島の山が、ほかの山から離れているためだ。

環境省の統計では、2025年にクマに襲われた人は236人、亡くなった人は13人。どちらも過去最多だった。市長のSNSには、こうある。「クマの怖さを知る地域では『可愛そう』では済まされない場面があるのです。」(原文ママ)

怒りの声は、クマに会う心配がほとんどない土地から届いた。遠いほど、話は単純になるように見える。

ここが、ややこしい。J-CASTニュースは「9割が誹謗中傷や緊急銃猟を実施したことに対する経過を問うような内容」と伝えている。なぜ撃ったのかを知りたい問い合わせも、同じ9割に入っている。

ネットの評判

Xでは、市を気の毒がる声が目立つ。J-CASTニュースが紹介した投稿には「公務執行妨害で告訴するべきだと思う」とあった。一方、市に届いた声の中には「山に帰すことはできなかったのか」という問いもあった。

夜に光るスマートフォンの画面
写真はイメージ Photo by Rami Al-zayat on Unsplash

市長が心配しているのは、自分の市のその後ではない。「どこの自治体も緊急銃猟をしなければならない場面の中でこれをやってしまうと『同じように苦情が来てしまうのではないか』と正しい判断ができなくなってしまう可能性がある」。クマのいない土地から届いた456件が、次の町の判断を遅らせるかもしれない、というのが市長の心配だ。

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