10/9 17:49 更新

あの人は、
次から呼ばないでほしい

――ある知事が、記者たちに

写真はイメージ Photo by Akshay Chauhan on Unsplash

10/8 17:50 / 発信国:日本

兵庫県知事の会見、フリー記者の出席を断ったのは誰か

兵庫県は10月7日、斎藤元彦知事の定例記者会見に、フリージャーナリストの菅野完氏(51)が出るのを認めなかった。6月3日の会見で、菅野氏が知事に「人殺しやないか、お前は」と言ったことが理由だ。知事は7日、この発言について「一般的な社会通念に照らして容認しがたく、精神的負担や心理的圧迫を受けるもので、極めて不適切な言葉だ」と話した。

6月に外したのは、知事ではなく記者クラブだった

兵庫県の知事定例会見は、県と県政記者クラブの共催で開かれている。フリーの記者から申し込みがあったときは、クラブが決めた基準で出席の可否を判断してきた。

6月3日の発言の翌日、クラブは、菅野氏が会見の進行を妨げたとして、以後の出席を断った。その後、菅野氏が謝り、再発防止を誓った。クラブは8月下旬、参加の基準を満たしたと判断した。10月7日から、また出られることになっていた。そこへ県が待ったをかけた。これが今回の順番だ。

では、なぜ菅野氏はそんな言葉を使ったのか。火種は、会見での知事の一言だった。5月の会見で斎藤知事は、内部告発をしたあとに亡くなった元県民局長について「懲戒処分をさせていただいた。最終的にご本人もそれを受け入れた」と話していた。6月3日、菅野氏は別の記者と知事のやり取りを遮る形で「人の死を愚弄するな」「人殺しやないか」と声を上げた。

「総合的に判断」だけが残った

7日の会見で、記者たちは食い下がった。不適切な発言の線はどこにあるのか。出席を断る法的な根拠は何か。知事は「知事として総合的に判断」と繰り返すばかりで、根拠は示さなかった。県が挙げたのは、会見での不適切な発言と不規則な発言だ。県は「総合的に勘案し、円滑な会見運営の観点から判断した」と説明している。

会議室に並ぶ空いた椅子
写真はイメージ Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

記者クラブは「知事が恣意的に記者を選別するかもしれないという懸念を払拭するに至らず、受け入れられない」と声明を出した。知事が自分の都合で記者を選べてしまうのではないか、という心配だ。慶応大の横大道聡教授(憲法学)は「制限と解除の明確な条件が示されなければ他の記者も質問がしづらくなる」と話した。

菅野氏は、発言の内容を問題にしてきた県の対応について「憲法が禁じる検閲にあたるのではないか」と反論し、法的な手段も考えるとしている。知事は6月10日、この発言について菅野氏を名誉棄損罪で刑事告訴したことも明かしている。

ここは分けて考えたい。フリー記者という枠ごと会見から追い出すのと、特定の1人を、特定の言動を理由に外すのは、同じではない。今回は後者だ。6月に同じことをしたのは記者クラブ自身だ。取材する側にも線が要る、という点は記者の側も認めていたように見える。変わったのは、線を引く人だ。6月は記者が引き、10月は知事が引いた。基準が示されないまま知事が引けば、次に外れるのが誰かは分からない。

ネットの評判

読売新聞の記事には、200件を超えるはてなブックマークが付いた。Xや掲示板の声をまとめたサイトでは、知事の判断を支持する書き込みが目立つ。「言論の自由だからって、何を言っても良い理由じゃない」「言葉を選べない奴は出禁やむなし」。一方で「県はどういった『権限』でその判断を下したのか」と、県のやり方を疑う声もある。

ただ、菅野氏は発言そのものを撤回していない。県の担当者は、そこから再発の可能性があると話した。どんな言動なら次は認められるのか、その条件は7日の会見でも示されなかった。

この話、あなたはどっち? →

出典

よく読まれている記事

こちらの記事も

← 一覧へ戻る