10/9 17:49 更新

ネタも服も同じ。ただし相手は実在しない

米国の芸人が公開した比較動画。相手はAIで作られた「女性芸人」

10/7 16:00 / 発信国:米国

AIの『女性芸人』がネタを盗んだと報道 日本の著作権法なら、ネタは守れるのか

2026年10月3日、米国の芸人ジョージ・ブレット・オルソン氏が、自分の舞台の映像と、Instagramで人気の動画を並べた比較動画を公開した。しゃべる言葉もオチも、服の色まで同じだった。相手は「Tiffany Sloan」と名乗る女性芸人。ただし、実在しない。AIで作られた人物だ。オルソン氏はThreadsに「AI stole my joke and outfit」(AIが私のネタと衣装を盗んだ)と書いた。

3週間でフォロワー37万人超

このアカウント(@tiffany.bbyx)が投稿を始めたのは2026年9月11日。Kotaku(10月5日)によると、3週間ほどで動画を75本上げ、フォロワーは37万5000人を超えた。1本は2週間足らずで700万回再生。オルソン氏本人の公式Instagramは、10月7日の時点で28万6000人だ。ネタを取られたと訴える側のほうが、少ない。

なぜ、そんなことができるのか。Gizmodo(10月6日)が書いたやり方は、こうだ。芸人が舞台でやったネタをAIに読み込ませ、しゃべる人物だけを別人の姿に差し替える。沸いている客席も作り物だ。動画はすべて収益化されていて、成人向けの有料サイトへの誘導も付いている。作り手が誰なのかは、分かっていない。

ネタを使われたと報じられたのは、オルソン氏だけではない。GizmodoはOlivia Carter氏とSarah Purdum氏の名前を挙げ、Kotakuは、ネタを取られた芸人が数十人に及ぶと書いた。Carter氏は、新しいネタをSNSに上げるのをやめたとGizmodoに話している。オルソン氏はThreadsに「What’s crazy to me is you can’t report this」(驚くのは、これを通報できないことだ)とも書いた。The A.V. Club(10月5日)は、このアカウントがMetaの規約には違反していないとした。

今も、消えていない

10月7日の時点でも、このアカウントは残っていた。フォロワーは37万7000人に増え、肩書きは「actress」(俳優)のまま。AIで作ったという断りは見当たらない。Metaがどう動くのか、芸人が法的な手段を取るのかは、各媒体の記事にも書かれていない。

日本の法律なら、ネタは守れるのか

同じことが日本で起きたら、芸人は著作権で戦えるのか。ここが、ややこしい。

ネタの台本は、言語の著作物になりうる。著作権情報センターは、その例として「論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演など」を挙げている。台本の言葉どおりに写されたのなら、争う道はある。

ところが、言葉が短くなるほど、守りは弱くなる。弁護士ドットコムに載った高橋淳弁護士の回答(2021年3月22日)は、芸人のギャグについて「短文なので著作権の保護対象外と解されます」としている。一発ギャグや決めぜりふは、守りにくい。

では、打つ手はないのか。ある。舞台の映像のほうだ。演じる人には実演家の権利がある。勝手に録画されたり、ネットで流せる状態にされたりすれば、そこを突ける。

AIで作り直したから安全、ともならない。文化庁の考え方を解説した前野孝太朗弁護士の記事(ITmedia、2024年3月)は、侵害というためには依拠性が要ると書いている。AIが学んだデータに元の作品が入っていなければ、似ていても偶然とされる。

日本の著作権法が守りやすいのは、笑いの発想ではなく、台本に書いた言葉と、舞台を録った映像のほうだ。

出典

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