10/9 17:49 更新

まだ世の中に広まって
いないので、だめです

――ある大臣が、60年前の国会で原子力推進機関について

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10/7 15:55 / 発信国:日本

安保3文書に原潜言及案 止めてきたのは60年前の国会答弁

政府が年内に改める安全保障の3つの文書に、自衛隊が原子力潜水艦を持つかどうかの検討に入る、と書き込む案が出ている。2026年10月6日に共同通信が、7日に読売新聞が報じた。中国が太平洋などに出てくる動きが強まっていて、長く潜っていられる原潜がないと抑止力は保てない、という分析があるらしい。

ただ、書き方は抑える。保有を前提にするような表現は避け、研究や議論の足掛かりにとどめる記述を想定していると共同通信は伝えた。

なぜ、そんな回り道をするのか。法律があるからだ。1955年12月19日にできた原子力基本法は、第2条で原子力の研究と利用を「平和の目的に限り」行うと決めている。

言葉を選ぶ工夫は、党の提言にも出ている。読売新聞によると、自民党の提言には「次世代の動力の活用」とあり、どんな動力かには触れていない。日本維新の会は、原潜を早急に導入すべきだとはっきり書いた。

60年前の答弁が、何を止めてきたか

基本法のこの一行が、何を止めたのか。はっきり出てくるのは1965年の国会だ。5月11日、参議院の委員会で、愛知揆一科学技術庁長官が答えている。原子力を自衛艦の推進力に使うことは「認められない」。

国会議事堂の建物
写真はイメージ Photo by Tsuyoshi Kozu on Unsplash

以後、政府はこの線を動かしていない。2024年9月5日、林芳正官房長官は記者会見で、今の原子力基本法の解釈では原潜を持つのは難しい、日本が持つ計画はないと話した。2025年11月にも、政府は1965年の見解を今も維持していると答えた。

原潜を止めてきたのは、条文そのものというより、条文をどう読むかという政府の説明だった。

「現状においては」という条件

ここが、ややこしい。愛知の答弁は「認められない」で終わっていない。その前に条件が付いている。船の推進力として原子力を使うことが「一般化していない現状においては」、という条件だ。

古い書類が並ぶ書庫の棚
写真はイメージ Photo by Leiada Krözjhen on Unsplash

船を原子力で動かすことが、世の中でまだ普通になっていない。だから自衛艦にも使えない、という理屈である。条件が付いているなら、条件が変われば結論も変わる、とも読める。ただ政府は、その現状認識を今も変えていないと答えている。

条文に手が入ったこともある。2012年、原子力規制委員会設置法の附則で、基本法の第2条に「我が国の安全保障に資すること」という言葉が足された。軍事に使う方へ広げて読まれるのではないか、という心配が国内外から出た。野田内閣は同年7月10日の答弁書で、平和の目的に限るという規定の中身は改正の前後で変わらない、非核三原則も堅持すると答えた。言葉は足したが、意味は変えていない、という説明だ。

小泉進次郎防衛相は2026年9月28日、BSフジの番組で、核兵器や原潜の保有もタブーをつくらずに議論すべきだという考えを示した。

では、いくらかかるのか。読売新聞によると、建造費は通常の潜水艦の数倍で、整備や乗員の育成にも専門の体制が要る。民間の原子力資料情報室は、米国から3隻買って国内で5隻造る場合、2050年代半ばまでに累計5兆4千億円かかると試算した。あくまで一つの試算である。

ネットの評判

Yahoo!ニュースに配信された読売新聞の記事には2,170件のコメントが付き、その日のコメントランキングで1位になった。多いのは、検討そのものは必要だが慎重に進めるべきだ、という声だ。賛成側からは、周辺国の動きを見れば自前の抑止力は欠かせない、オーストラリアが先に導入を決めている、という書き込みが支持を集めた。

いちばん支持が付いていたのは、お金より人の話だった。原子力を扱える人を育て、整備の体制をつくり、燃料と廃棄物を管理し続けられるのか。今の潜水艦24隻の体制ですでに人が足りない、という指摘もあった。導入ありきにせず、何をしたいのかをはっきりさせてほしい、という声も目立つ。はてなブックマークでは、41人がこの記事を保存していた。

60年前、原潜を止めたのは「平和の目的に限り」という一行だけではなかった。船を原子力で動かすのはまだ世の中で普通ではない、という当時の現状認識だった。

出典

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