10/9 17:49 更新

はっきりと
覚えていない

――国交省が、大臣の問い合わせを受けた幹部について

写真はイメージ Photo by Vidar Nordli-Mathisen on Unsplash

10/7 15:23 / 発信国:日本

簗農相の「予算カット」発言、国交省調査で確認された2月の問い合わせ

国土交通省は10月6日夕、簗和生農林水産大臣の「道路予算を大幅にカットした」という発言について、調査結果を公表した。発言は、2月の衆院選で首長が対抗馬を支援した栃木県那須烏山市と那珂川町について述べたものとされる。調査では、簗氏が2月中ごろ、この2市町の2026年度事業への配分額を省に問い合わせていたことが確認された。予算を減らすよう求める働きかけがあったかどうかは、確認できなかったという。

簗氏は10月5日に発言を撤回して謝罪したが、働きかけの事実そのものは否定している。7日も辞任を否定し、問い合わせの内容は「明確に覚えているわけではない」と述べた。理由については、地元から予算の状況に関心の声があったため、確認しようとしたと説明している。

問い合わせたのは、その2市町だけ

問い合わせがあったのは、衆院選が終わった2月中ごろ、配分額が決まる前だった。栃木3区の他の市町への問い合わせは確認されていない。問い合わせ先は当時の佐々木紀国交副大臣と黒田昌義官房長だったと報じられているが、その記事は開けず、確かめられなかった。

2026年度の社会資本整備総合交付金のうち、市町が単独で実施する事業への配分額は、那珂川町が前年度比54.1%減。那須烏山市については、簗氏に64%減と伝えられていたとされるが、新規事業を含めると26.2%減になる。

国交省の担当者は記者会見で、問い合わせを受けた幹部について「はっきりと覚えていない」「細かいメモはない」と繰り返した。圧力については、その幹部が「受けたことはなかったと思う」と説明したという。那須烏山市の川俣純子市長は「対象も那須烏山市と那珂川町に限定されるなど疑念はむしろ深まった」とコメントしている。

過去の事例で、線はどこに引かれたか

刑事罰の線は、2000年に公布されたあっせん利得処罰法が引いている。同法第1条が罰するのは、公職にある者が請託を受けて影響力を行使してあっせんし、「その報酬として財産上の利益を収受したとき」である。頼まれ、動かし、見返りを受け取る。配分額を尋ねたことだけで同法に触れるとは、条文からは読めない。

書類をまとめたファイル
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線の高さは、甘利明元経済再生担当相の件で示された。都市再生機構(UR)との補償交渉をめぐる問題で、甘利氏の事務所とUR担当者の面会記録は12回分が公開された。甘利氏自身も、大臣室と地元の事務所で計100万円を受け取ったと説明していた。それでも東京地検特捜部は2016年5月31日、同法違反などで告発された甘利氏らを嫌疑不十分で不起訴にした。

刑事罰の手前にある話は、記録でしか確かめられない。2017年、文部科学省は「総理の意向」などと記された14の文書が省内にあったと公表した。この文書が、加計学園の問題で何が伝えられていたかを後から追う手がかりになった。公文書管理法第4条は、決定に至る過程を後から検証できる形で文書に残すよう、職員に義務づけている(軽微な事案は除く)。

ネットの評判

7日午前のYahoo!ニュースのコメントランキングでは、上位20本のうち4本が簗氏の関連記事だった。国交省の調査結果を伝えた記事は1時間あたり272件のコメントで2位に入り、コメント数は4,481件になった。はてなブックマークでは、発言から1週間が過ぎても簗氏が農相を続けていることに疑問の声があると伝える記事が、21人のブックマークで人気エントリーに入っている。

国交省が働きかけを確認できなかったとした根拠は、記録ではない。幹部の「受けたことはなかったと思う」という記憶である。

出典

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