10/6 22:19 更新

相手は、こちらで
一人お選びします

――ある役所が、独身の職員に

写真はイメージ Photo by Vojtech Bruzek on Unsplash

10/6 18:14 / 発信国:シンガポール

出生率0.87のシンガポール、政府が公務員向け婚活サービスを試す

シンガポール政府の技術部門GovTechが、21〜35歳で結婚していない公務員だけが使える出会いの仕組み「FirstDate」の試験運用を始めた。入口は国民デジタルID「Singpass」で、年齢と婚姻状況が確認される。相手を選ぶのは、利用者ではない。仕組みの側が一人ずつ示す。

公式サイトの説明では、興味や生活習慣、価値観などの質問に答えると、相性の点数と相手の紹介が届く。返事の期限は3日(72時間)で、双方が同意したときだけ連絡先が渡される。データは「収益化も第三者提供もしない」が、「法令で求められる場合や認められる場合を除く」という条件が付く。

組み合わせを決めるのは、ゲール=シャプレーの安定結婚アルゴリズムだ。互いの希望順位から、組み替えの起きない組を作る考え方で、米国では医学生と研修先病院の割り当てに使われてきた。研究は2012年のノーベル経済学賞の対象になっている。次々と候補を振り分ける疲れをなくすのが狙いだという。

なぜ政府がここまでやるのか

2025年に生まれた子どもは3万人を下回り、出生率は過去最低の0.87に下がった。初婚年齢の中央値は男性31.1歳、女性29.6歳。ガン・キムヨン副首相は、手を打たなければ2040年代の初めに国民の人口が減り始めると述べている。

この仕組みは、GovTechが毎年開くハッカソン(職員が新しい案を試す催し)から生まれた。応募は10月5日に締め切られ、公式サイトは次の受付を10月20日に始めると告知している。公務員以外に広げるかは決まっていない。応募者数と成立した組の数は、どの出典にも書かれていない。

社交ダンスの靴
写真はイメージ Photo by Christian Harb on Unsplash

42年前、政府はダンス教室を開いていた

素朴な手は、すでに試されている。1984年1月に発足した社会開発ユニット(SDU)は、ダンス教室、ワインの講座、モルディブやクラブメッドへの船旅を、会員向けの割引つきで催していた。官費に近い形の合コンである。頭文字は「Single, Desperate and Ugly(独身、焦り、見た目も)」の略だと揶揄された。

2006年、SDUは自分で催すのをやめ、民間の仲介業者を認定して資金を出す側に回る。会員は長年減り続け、後継のSDNは2023年11月にウェブサイトを閉じた。ザ・ストレーツ・タイムズによれば、人付き合いの技術を教える支援へ軸足を移したもので、組織がなくなったわけではない。公費で飲み食いさせる手も、まだ残っている。UNILAD Techは、期間を限った企画で、組になった二人が「どちらも食べたことのない料理を試す」といった課題に参加すると、券が出る場合があると伝えている。

ネットの評判

反応は冷ややかだ。アルジャジーラは、交際相手探しに公金を使うなという批判や、国から配偶者を割り当てられるという冗談が出たと伝えている。Fortuneは「ディストピアだ」という評と、年齢の区切りをからかう書き込みを引いた。「21〜35歳。35歳より上だと政府にも見捨てられる、というのは本当なのか」

当事者も割れている。政府機関で教育に携わるジェイミーさんは、招待メールを受け取ったが参加せず、アルジャジーラに「かなり痛々しい。誰かが頑張りすぎているように聞こえる」と話した。公務員のヌル・アイシャさん(30)は登録した。「『別にいいじゃないか』という気持ちに近い」

42年前、政府はダンス教室と船旅で独身者を一か所に集めていた。いまはアルゴリズムが一人の名前を選び、72時間以内の返事を求める。

出典

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