10/6 22:19 更新

とりあえず、
図に書いてみて

――ある息子が、父に

写真はイメージ Photo by Ashley West Edwards on Unsplash

10/4 14:34 / 発信国:日本

寺の手書き1枚に、50年前から名前があった

2026年9月26日21時30分、Xに手書きの図が1枚投稿された。投稿したのは、データ基盤の技術資料をSpeaker Deckで公開しているエンジニアのokodoonさん(@miburo_data)。本文は「ITなんて何もわからない父親に『寺の業務システム作りたい』って言われて『とりあえずやりたいことの概念図書いてみ?』って言ったらこれが一発で出てきてまあまあ才能あるやんってなってる」。添えられていたのは、その図だけだった。

Yahoo!リアルタイム検索の表示では、2026年10月3日時点で「いいね」が1万4210件、リポストが1765件、返信が85件。まとめサイトTogetterの収録ページは、閲覧9万9232回と出ている。

同じ描き方に、50年前から名前がある

図に付いた返信には「立派なリレーション図やないか」があった。「『管理したいもの』をテーブル化して、リレーションを組むという概念に自然に辿り着いている」と書いた人もいた。

もの同士を線で結ぶこの描き方には、半世紀前から名前がある。ER図(実体関連図)だ。

名付けたのはピーター・ピンシャン・チェン氏。論文は『ACM Transactions on Database Systems』第1巻第1号(1976年3月)の9〜36ページにあり、著者欄の所属はマサチューセッツ工科大学。チェン氏が持ち出したのは、二つの言葉だった。もの(エンティティ)と、もの同士の関係(リレーションシップ)。仕事をこの二つに割って紙に落とす手順を、図の記法とあわせて示したのが、この論文だ。

解説サイトDataversityは、チェン氏が大学に身を置いていたことから、この考え方が多くの講義や書籍に入っていったと書いている。ER図はANSI規格にも採られた。

積み重ねられた古い学術誌
写真はイメージ Photo by Chris Lawton on Unsplash

ネットの評判

Togetterで目につくのは、ふだん仕事で客から要件を聞き出す側の反応だ。「要件定義フェイズで客からこれ出てきたら歓喜しちゃう」。

同じ図を見て、何人もが「曼荼羅」と書いた。寺だからそう見えたとは言い切れない。IT黎明期の現業部門でこういう概念図を上司に見せたら「曼荼羅みたいだな」と言われた、という昔話も書き込まれている。一方で「やっぱり仏教てシステムだからかな」と、寺のほうに理由を見る人もいた。

はてなブックマークは163ユーザー、コメントは57件。「すごい!ドメインモデリングができるドメインエキスパートだ!」と喜ぶ声があり、「自分の仕事を客観的に整理できる能力は誰でも持ち合わせてるわけじゃないからやはり凄いと思う」と、ITの技能とは別のところを評価する声もある。

冷ややかな書き込みもある。構造化分析で最初に作る図は「ITじゃなくて経営業務の具現化」なのだから、という指摘があった。それは「出来て当然というか、技術者側が知らんのどうなってるのってレベルやぞ」と続き、投稿者の言い方を「上から目線」と突き返していた。「DB設計はできそうだが、まだこれを使ってどんな機能を実現したいのかが見えないな」と、図の先を問う人もいる。

ほめられたのは、絵のうまさではなかった

批判する側も、図そのものは読める前提で書いているように見える。読めなければ「機能が見えない」とも書けない。

日本の寺の木造の堂内
写真はイメージ Photo by Marek Okon on Unsplash

Togetterには「おそらく既存の紙台帳をベースに書かれたものと思われますが、頭の中でシステマティックに管理されていたのでしょうね」という読みもあった。

紙に出ていたのは、二つだけだ。管理したいものと、もの同士の関係。それを自分の仕事から抜き出せるかどうかは、ITの資格とは別のところにある。

出典

よく読まれている記事

こちらの記事も

← 一覧へ戻る