10/6 22:19 更新

強さでも大きさでもなく『太さ』を競う大会。

米アラスカ「太っちょクマ選手権」の投票理由として語られた声

写真はイメージ Photo by Cal Rollins on Unsplash

10/4 13:09 / 発信国:アメリカ

強さでも大きさでもなく「太さ」を競う大会。20歳半の優勝クマの名は「バックパック」

米アラスカ州のカトマイ国立公園・保護区には、年に一度、世界中が本気で投票する大会がある。競うのは強さではない。速さでもない。太さである。

「Fat Bear Week(太っちょクマ週間)」。2026年の大会は9月22日から29日まで、4部門から選ばれたヒグマ16頭がトーナメントで競った。大会サイト(explore.org)によれば、冬眠中のクマは飲まず食わずで、体重の3分の1が落ちる。脂肪は笑いどころではなく、冬を越すための装備である。

ならばいちばん丸いクマが勝つはずだ。ところが、票を集めた理由として語られていたのは、「彼のほうが年上だから」だった。

脂肪の品評会で、持ち出されたのは年功序列

勝ったのは89番、愛称「バックパック」。決勝は103,334票対98,253票、910番に約5,000票差をつけた。大会全体では世界から230万票を超える投票があった。推定体重はおよそ450〜540キロ。20歳半である。

アラスカ・パブリック・メディアの取材に、カトマイのレンジャー、サラ・ブルース氏は「見慣れたクマです。人々は彼の一生を見てきました」と話している。そのうえで、「89番に入れよう」と言う人の理由として、「彼のほうが年上で、ほかの若いクマにはまだ機会がある」という言い方を見かけた、と語る。体脂肪を比べる大会で、人間が持ち出したのは順番待ちの論理だった。

ブルース氏は89番を川では寡黙な存在だと言い、「もめ事に首を突っ込むことも、序列を乱すこともない」と続ける。公園側の紹介文にも、下流のお気に入りの岩で過ごすことが多いとある。太さを競っているはずなのに、褒められているのはほぼ人格だ。

決勝に残ったのは、2019年の王者ホリー(435番)の息子と、2015年・2018年の王者ビードノーズ(409番)の娘だった。

準決勝では、89番が164番「バッキー・デント」を1%未満の差でかわした。今年は枠が12頭から16頭に増え、投票サイトが混み合って1回戦が1日延びている。公園側は「インターネットは、これだけの量の太ったクマを受け止める準備ができていなかったようだ」と説明した。

そして名前である。2006年にブルックス川へ現れた子グマは、川を渡るたび母の背中へよじ登った。それで「バックパック」になった。翌2007年の春、脚を痛めて歩くのもままならない姿で現れる。レンジャーは越冬を危ぶみ、視聴者は手を貸せと公園に訴えた。公園は動かなかった。母の支えだけで回復し、2008年に独立した。

母の背中に乗っていた子グマは、20年かけて、もう誰の背中にも乗れない体になった。その体で、世界一に選ばれた。

出典

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