道は閉まったままなのに、
荷物だけ届いている
――ある店主が、満杯の棚を見て
写真はイメージ Photo by engin akyurt on Unsplash
ホルムズ海峡は閉じたまま。原油だけが戦前の水準に戻った
町から出る道が、半年以上も封鎖されている。検問は解けず、通れる車は1日に数台。それなのに、店の棚には前と同じ量の荷物が並んでいる。
これは日本の話ではない
ここからは実際の話だ。舞台はホルムズ海峡。アメリカとイスラエルがイランを空爆した2026年2月28日のあと、イランがこの海峡を閉じた。7カ月以上たつが、アメリカとイランの交渉はまとまっていない。
海運の分析会社Kplerは10月1日、見通しの前提を変えた。これまでは「米イランの包括的な合意ができてから海峡が戻る」という読みだった。それを「合意がなくても、戦いが続いたまま、じわじわ戻る」に切り替えた。
理由は数字だ。湾から出ていく原油は、迂回した分を足すと1日約1850万バレル。戦前の水準にほぼ並んだ。
ここが、ややこしい。海峡が開いたわけではない。10月5日のResponsible Statecraftによれば、通れている船は1日6〜17隻。攻撃もやんでいない。Tech Timesは10月7日、インド出身の船員が2月以降の湾内の攻撃で少なくとも10人亡くなったと伝えた。
原油は、海峡を通らずに出ていった
では、どうやって戻ったのか。答えの一つは、海峡を通らなかったことだ。
アメリカのエネルギー情報局(EIA)によると、サウジアラビアには紅海のヤンブー港まで原油を運ぶ「東西パイプライン」があり、1日500万バレルを流せる。UAEにも、オマーン湾のフジャイラ港へ抜ける1日180万バレルの管がある。どちらも、出口が海峡の外にある。
残りは、海の上の工夫だ。Kplerが挙げたのは、護衛付きの通航、夜間の通航、位置を知らせる装置を切ったままの通航、沖で船から船へ積み替えるやり方、遠回りの航路。カタールとUAEのLNG船も、9月初めから装置を切ったまま通り始めたという。
ただ、安くはない。海事の専門家Sal Mercogliano氏はResponsible Statecraftに「原油そのものの動きは戻っている。ただし、長い航海と、並外れた戦争危険の費用を払って」と話した。
戻ったのは原油だけだった
では、ガソリンはどうなのか。ここが本題だ。
Kplerの数字では、中東湾岸からの石油製品の積み出しは9月初めに1日300万バレルまで伸び、直近は250万バレルに落ちた。戦前より約50%少ない。Kplerは、これがいちばんの詰まりだと書いている。
EIAの説明では、迂回に使われているのは原油のパイプラインだ。精製されたガソリンや軽油は、そこを通らない。原油にだけ抜け道があった、と読める。
日本の足元を見る。資源エネルギー庁は3月19日から緊急的激変緩和措置を続けている。10月8日時点で、ガソリン1リットルにつき42.4円。軽油も灯油も同じ42.4円だ。月に100リットル給油する人なら、1カ月で4,240円分を国が払っている。
欧州のガスの在庫も、冬の終わりには約30%まで落ちるとKplerは見ている。
ネットの評判
アメリカの掲示板Reddit(レディット)の経済の板には、547点と約300件の書き込みが付いた。意見は二つに割れた。数字のとおり本当に戻ったと見る側と、位置情報を切った危ない運び方と膨らんだ費用に頼っているだけだと見る側だ。
Kplerは、今後6カ月のうちに海峡が全面再開するとは見込んでいない、と書いている。
シンクタンクDefense PrioritiesのRose Kelanic氏は、Responsible Statecraftにこう話した。「イランは海峡を完全に閉じることができず、アメリカも完全に開けることができない」
- Hormuz: Normalisation no longer needs to wait for a deal(Kpler、2026年10月1日)
- The Strait of Hormuz oil chokepoint(米エネルギー情報局 Today in Energy、2025年6月16日)
- 中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置(資源エネルギー庁)
- Increase in Hormuz oil traffic is papering over a darker reality(Responsible Statecraft、2026年10月5日)
- Iran Strikes Hormuz Tankers Daily as Gulf Oil Exports Reached Pre-War Levels(Tech Times、2026年10月7日)
- 2026 Strait of Hormuz crisis(Wikipedia英語版)
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