10/9 17:49 更新

上司の前でなら、
鞄をお見せします

――ある会社員が、駅で呼び止めてきた警察官に

写真はイメージ Photo by bady abbas on Unsplash

10/8 10:26 / 発信国:日本

新橋駅で職質、鞄を見せる代わりに「上司の立ち会い」を求めた

新橋駅の構内で、ある会社員が警察官に呼び止められた。職務質問だ。鞄の中身を見せてほしい、と言われたという。その人がXに書いた答えは、こうだった。「職務規定で部外者には見せられないので、会社までついてきてもらえれば上司立ち会いの下でお見せします」

警察官は2人いた。駅から第一京浜の交差点まで、歩いて2、3分の道をついてきた。投稿者が信号を渡り始めて振り返ると、2人は駅のほうへ戻っていくところだったという。鞄は開かないまま終わった。

この投稿をまとめたページ(Togetter。Xの投稿と返信を集めて1本にするサイト)は10月7日に公開され、同じ日の夜までに5万9,000回あまり読まれた。

「仕事に遅れるからです」と断った人も

まとめには、別の人の話も載っている。その人は職務質問を「仕事に遅れるからです」と断った。そのうえで、こう続けたと書いている。「タイムカード切った後ならいくらでも対応します。その際はあなたから会社に事情を説明するようお願いします」

オフィスの時計とタイムカード
写真はイメージ Photo by Ocean Ng on Unsplash

2人とも、見せないとは言っていない。見せる場所と時刻を、勤め先の都合に合わせてほしいと言っている。遅刻の責任と、鞄の中身を社外の人に見せた責任。それを自分ひとりで背負うのは困る、という話だ。

ここが、ややこしい。

そもそも、断っていいのか

読んでいて先に気になるのは、これだろう。断って平気なのか。

街角の交番
写真はイメージ Photo by Yanhao Fang on Unsplash

答えは、断ってよい。元検事の弁護士、上原幹男さんの事務所の解説によると、職務質問は任意で、拒否できる。警察署への同行や所持品検査に応じるかどうかも同じだという。

根拠は条文にある。警察官職務執行法の2条3項には、こうある。「前2項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない」

ただ、鞄のほうは少し込み入っている。所持品検査には、法律の明文がない。1978年、最高裁が線を引いた。原則は本人の承諾を得て行うもの。ただし捜索に至らない程度なら、必要性や緊急性、守られる公共の利益と傷つけられる個人の利益の釣り合いを見て、承諾がなくても許される場合がある、という。

では、何が駄目なのか。この判断では、アタッシュケースの鍵をドライバーでこじ開けた行為が違法とされた。同じ1978年の別の判決では、服の内ポケットに手を差し入れた行為も違法になっている。外から触る、見えているものを取り出す。そのあたりが境目らしい。

では、遅刻した分は誰が埋めるのか。職務質問で勤務に遅れた時間の扱いは、今回読んだ出典では確かめられなかった。

ネットの評判

はてなブックマークでは、このまとめに151件のブックマークと84件のコメントが付いた。声は、きれいに割れている。

協力すべきだという側は、治安の話をする。「治安維持のためには職質は仕方がない」という声や、パトロールが減って地元で事件が起きるほうが困る、という声があった。あるユーザーは「ちゃんと怪しい人間を職質してくれてありがとう」と書いている。

負担を問題にする側は、止められる側の時間と視線を持ち出す。まとめのコメント欄には、若い警察官の研修に使われることがあり、そのときの周りの目線に耐えられない、という声があった。はてなブックマークには、十徳ナイフで前科が付いたという話を聞くと考えてしまう、という書き込みもあった。

鞄を開けるか、上司を呼ぶか。迷う前に、覚えておける一行がある。「答弁を強要されることはない」。これは誰かの意見ではなく、警察官職務執行法の条文に、そのまま書かれた文字だ。

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出典

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