10/6 22:19 更新

気が弱いのは、
親に似たせいだ

――慈恵医大が調べたのは、染色体ではなかった

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10/5 19:04 / 発信国:日本

慈恵医大が発表した、うつ病の「なりやすさ」が親から子へ伝わる経路

東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の小林伸行准教授と近藤一博教授らが、うつ病になりやすい体質が親から子へ伝わる仕組みを解明したと発表した。発表は2024年2月13日、論文は同月9日に米国の科学誌iScienceに掲載された。伝わっていたのは染色体ではなく、ヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)の、ある遺伝子の型だという。

繰り返しの回数が17以下かどうか

論文によると、HHV-6Bは幼児期までに人口の約95%が感染する。主に母から子へ、家族の中で伝わり、感染は一生続く。研究チームが注目したのは、ウイルスのSITH-1という遺伝子だ。SITH-1の中にはR1Aと呼ばれる12塩基の繰り返し配列があり、回数は人によって2回から27回まで幅がある。回数が多いほど、SITH-1は発現しにくい。

DNAの模型
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繰り返しが17回以下の型を持つ人は、うつ病患者で67.9%、健康な人で28.6%だった。オッズ比は5.28である。17回以下の患者のうち47.4%は家族にもうつ病患者がいて、18回以上の患者の家族にはいなかった。

慈恵医大は、親に感染している常在微生物が子へ伝わることも遺伝の仕組みになり得ると示した「世界で初めての発見」だとしている。報道発表には、新生児期に「うつ病を起こしにくい」HHV-6をワクチンとして接種すれば、「原理的には、うつ病の遺伝を抑制することが可能となる」とも書かれている。

配列を読めたのは、患者28人

錠剤の薬
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ただし、論文でR1Aの配列を読めたのは、うつ病患者28人と健康な人35人である。67.9%も47.4%も、この人数の中での割合だ。論文は自らを小規模な研究と位置づけ、この型が本当にうつ病の遺伝に関わるかを確かめるには、何世代かにまたがる大規模な研究が必要だと書いている。新生児期の接種の話は、論文には出てこない。

発表の表題も「仕組みを世界で初めて解明」で、原因の解明とは書かれていない。

円形脱毛症には、もう薬がある

心の病気に説明がついたなら、円形脱毛症はどうなのか。MSDマニュアル プロフェッショナル版は、これを「遺伝的素因をもつ個人が環境誘因に曝露することで生じる自己免疫疾患と考えられている」と説明し、「環境誘因については十分に明らかにされていない」と書く。それでも薬は先に出た。日本皮膚科学会は2022年6月21日、JAK阻害薬バリシチニブの重症円形脱毛症への適応追加を告知した。適応は「脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る」という条件付きだと、西日本皮膚科84巻6号は書いている。

ぎっくり腰は、病名ではない

日本整形外科学会は、ぎっくり腰を「急に起こった強い腰の痛み」を指す通称だとし、「病名や診断名ではありません」と書いている。原因は、関節や椎間板の捻挫、筋肉や腱・靱帯の損傷が多いと考えられる、とある。

腰痛全体では、原因を特定できない非特異的腰痛が世界で約85%とされる。山口大学のグループが2016年にPLOS ONEに発表した調査では、山口県の整形外科の診療所を受診した患者320人のうち、78%の250人で原因を特定できた。残る22%、70人は特定できなかった。ただし著者らは、この差は日本と欧米で腰痛の診断の仕方が違うためだとみている。

うつ病の「なりやすさ」には、オッズ比5.28という数字が付いた。ぎっくり腰には、まだ病名が付いていない。

出典

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