10/6 22:19 更新

立っていれば、もてなしになる

米運輸保安庁の説明

写真はイメージ Photo by Hongly Oung on Unsplash

10/4 14:36 / 発信国:アメリカ

米TSAが空港から撤去したのは、職員の椅子 「歓迎すべき変更」と当局

米運輸保安庁(TSA)が、警備態勢を強化すると言い出した。人員が増えるのか、検査機が新しくなるのか。実際に動いたのは、椅子だった。

保安検査場の入口で搭乗券とIDを確認する職員の台から、椅子が次々に外されている。TSAが全米一律のこの変更を認めたのは9月29日。撤去は大半の商業空港で既に始まった。勤務中に座ることは許されない。声明はこうだ。「この歓迎すべき変更は、職員が立って警戒していることで、我々の警備態勢ともてなしへの姿勢の両方を強化する」。

歓迎すべき変更。少なくとも、椅子がなくなった側は歓迎していない。

立っていれば、もてなしになる

理屈だけなら、筋は通る。搭乗客が最初に接するのはこの職員だ、というのがTSAの出発点だ。声明はこう続く。「全職員は、旅行者にとって歓迎される専門的な環境をつくりながら、国家安全保障上の重要な任務を果たせるよう、職務適性の要件を満たさなければならない」。椅子の話が、声明の二文のあいだに職員の適性の話へ移っている。

搭乗券を確認する保安職員
写真はイメージ Photo by CDC on Unsplash

米政府職員労働組合(AFGE)のTSA評議会100は反発した。「これらの椅子は、硬い床の上で一日中立ち歩く職員にとって基本的な人間工学上・安全上の支えだ」。「TSAはこれを特権のように扱っているが、特権ではない。従業員にとっての基本的な安全と、人としての当たり前の扱いの問題だ」。

組合がこの件を知ったのは、組合員からだった。AFGEにも各支部にも正式な通知はなかったという。現場が気づいたのは金曜の午後である。検査員を代表する組織が、椅子が消えたあとに事情を知った。

なぜ、通知なしでできたのか

米国では多くの州が「座る権利」を法で定めている。ただ、TSAの職員は連邦職員にあたるため州法は及ばない、と米Straight Arrow Newsは報じている。

TSAが職務の要件に挙げている項目には、検査場での業務中、休憩なしで最長4時間立ち続けられること、というものもある。書類の上では、あの椅子は最初から必須の備品ではなかったことになる。

方針は、2026年8月に上院の承認を受けたデビッド・カミンズ長官の「Horizon 25」構想のもとで出てきた。中身は、プレチェックの拡大、新技術の導入、検査場の一部民営化、そして搭乗客の体験の向上である。長官は「TSAは、安全な検査場と、効率的な検査場と、高められた搭乗客の体験のどれかを選ばなければならないわけではない」と語っていた。

選ばなくていいと言った構想から、最初に消えたのが椅子だった。TSAは11月に創設25年を迎える。節目の青写真が最初に現場へ届けた変化は、座る場所の消滅だった。

出典

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