10/6 22:19 更新

預けたあとは、
うちの管理じゃない

――ある警察トップが、記者に

写真はイメージ Photo by Nik Schmidt on Unsplash

10/4 09:58 / 発信国:フィジー

フィジーの高裁で証拠のコカイン52キロが消え、32キロは小麦粉に

ある港町に、町営の倉庫がある。数年前に押収された危険な品が、箱のまま預けられている。鍵を持つのは倉庫番で、運び込んだ側は、もう自分たちの物ではないと帰っていった。裁判が長引き、箱は何年も開けられないままになる。処分の日がようやく決まって封を切ったら、中身は小麦粉だった。

これはたとえ話で、舞台は南太平洋の裁判所

この倉庫は日本にはない。舞台はフィジーの首都スバにある高等裁判所の証拠保管室だ。豪ABCは9月29日、麻薬密輸事件の証拠として預けられていたコカイン32キロが小麦粉に入れ替わり、事実上行方不明になっていると報じた。

被告は、フィジー・カナダ国籍のジョシュア・アジズ・ラーマン。コカインは2019年に押収され、2021年3月に高裁の保管庫へ入った。ラーマンは2021年に有罪となり23年の刑を受けた。2026年2月に上訴でいったん釈放されたが、判決が復活して収監されている。上訴が続くあいだ、押収品は廃棄できない。箱は、そのために置かれ続けていた。

発覚したのは、当局が9月に廃棄の手続きに入ったからだ。9月15日の点検で、39個あったコカインの塊のうち7個が足りないと分かる。残る32個を鑑定に回すと、結果はすべて陰性だった。重さでは、入れ替わっていた分が32キロにあたる。フィジー警察は、証拠はすべて改ざんされており、捜査は高裁登記所で証拠の管理を直接担っていた者に絞られていると発表した。

消えた量は、翌日さらに増えた

9月30日の記者会見で、数字が動いた。2018年に豪州の競走馬調教師ジョン・ニコリックのヨットから押収された12.9キロもなくなっていた。高裁の証拠室から消えた総量は52キロを超えた。盗難が起きた時期、証拠保管室の監視カメラは一部が動いておらず、生体認証の入退室管理も不調だったと、ペニ・トゥイバガ上級警視が明らかにした。

ルシアテ・トゥドラブ警察長官の説明が、この件の輪郭を表している。スバ高裁の証拠室に預けたあとは、自分たちが守っているわけではない。長官はそう述べ、「あなたの家のようなものだ。家の主はあなたで、私が上がり込んで守りますとは言えない」と続けた。警察は、保管庫に入れる司法側の職員6人を関係者として絞り込んだ。うち1人は国外にいる。

残ったのは、小麦粉と記録だけ

金額の見立ては、どの分を数えるかで変わる。CNNの配信記事はラーマン事件の分を3,000万フィジードル(約1,330万米ドル)とし、ABCは消えた52キロ全体で2,000万ドルを超えるとした。ただ、この話の厄介さは金額ではないように見える。押収品は、裁判で有罪を立てるための物そのものだ。その箱を根拠にした裁判は何だったのか、という問いが残る。

野党のジョネ・ウサマテ議員は、ほかの証拠品の中身が本当に申告どおりだと、いまどうして言えるのかと問うた。シロミ・トゥラガ司法相は、衝撃を受けたとし、誰も見逃さないと語った。トゥドラブ長官によれば、全国の警察署を回って押収薬物と現金を調べる監査班が動いている。

フィジーでは2026年1月に2.6トンのコカインが押収されている。ランブカ首相は昨年、3年のあいだに27人の警官が薬物関連で法廷に立ったことを受け、国の麻薬対策局を解体した。押さえる力はあった。置いておく場所が、まだない。

出典

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