10/6 22:19 更新

最善の対策が、被害そのものだった

働く500人への調査

写真はイメージ Photo by Vitaly Gariev on Unsplash

10/3 17:42 / 発信国:日本

「関わらない」を選ぶのはどちらも同じでしょう。”沈黙”を”不機嫌”と取られるなら一体どうしたらいいんだ

職場に1人はいる。返ってこない挨拶、聞こえるように吐かれる溜め息、舌打ち。どれも言葉ではないので、注意するきっかけがない。エムフロが2026年5月に500人(女性345人、男性155人)に聞いた調査では、仕事をしている人の74.6%が「職場にフキハラをする人がいる」と答えた。およそ4人に3人である。そして同じ調査は、対策も聞いている。答えは1つに偏っていた。

フキハラは不機嫌ハラスメントの略で、言葉の生みの親は慶應義塾大学の満倉靖恵教授だ。日刊SPA!が10月2日に出した記事に、IT企業に勤める30代男性の証言がある。報告に行っても、課長級のチーフエンジニアは顔を上げずにパソコンを打ち続ける。もう一度声をかけるとキーボードを叩きつけ、周りに聞こえる溜め息をつく。返ってきた言葉は「……で、何が言いたいの?」。やがて、機嫌を損ねた側が悪いという空気になり、ほかの社員まで言動が荒くなったという。

対策は、ほぼ満場一致だった

で、どうするか。エムフロの調査で1位になった対策は「なるべく関わらない」で65.8%。2位の「感情を無にして接する」が10.2%、3位の「相手の機嫌を取る」が9.0%。1位だけが突き抜けている。機嫌を取ると答えた9.0%は、職場でいちばん損な役なのではないか。

会話のない静かなオフィスの席
写真はイメージ Photo by Uneebo Office Design on Unsplash

ところが同じ調査で悪影響を聞くと、1位は「雰囲気が悪くなる」28.4%、2位は「コミュニケーションが減る」20.6%、3位は「仕事の効率が下がる」17.0%だった。

並べ直すと妙なことになる。被害を避けるために65.8%が選んだ最善手は、悪影響の2位に挙がっている行動とほぼ同じだ。対策が悪影響を再現している。

理屈は通っている。満倉教授は、不機嫌は伝染すると指摘する。「脳波の研究で明らかになったのは、人間の感情はネガティブが主体で、他人の不機嫌にまで敏感に反応する事実です」。人は他人の不機嫌に無意識に同調し、職場で「不機嫌のパンデミック」が起こるという。感染源に近づかないのは、きわめて正しい判断だ。全員が正しく判断した結果、誰も話さない職場になる。

日刊SPA!が引くKiteRaの調査では、こうした言動が原因で退職を検討した人が45.8%。「溜め息、舌打ち、挨拶を無視」をされた人に限ると51.8%だった。退職は、いちばん確実な「なるべく関わらない」である。

あの課長が報告に返したのは、キーボードの音と、溜め息と、「……で、何が言いたいの?」の一言だった。言葉になっていない不機嫌には、返す言葉もない。だから65.8%は、関わらないほうを選ぶ。正しい人だけが残った職場は、たぶん、静かだ。

出典

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