10/9 17:49 更新

あの会議の資料、
まだ回ってるだろう

――ある元上司が、昔の部下に

10/7 17:26 / 発信国:ドイツ

独情報機関の元トップ逮捕 首相府の会議資料2000件が流れた疑い

会社を辞めた元上司から、電話がかかってくる。「あの会議の資料、まだ回ってるだろう」。

これは日本の話ではない。10月6日、ドイツの連邦検察が、対外情報機関BNDの元長官アウグスト・ハニング氏と、部下だった元幹部を逮捕したと発表した。容疑はスパイ行為や国家機密情報の収集など。ハニング氏は80歳だ。

首相府の会議の資料が、12年分流れた

検察の見立てはこうだ。2010年の春、2人は約束を交わした。元幹部がBNDの価値ある情報をハニング氏に渡し続け、見返りに金を受け取る。ハニング氏は、自分の民間の助言業でその情報を使うつもりだったとされる。

渡った文書は、2022年6月までで約2000件。多くに機密の指定が付いていた。中身は、首相府で定期的に開かれる会議の資料だ。各省庁の幹部と、ドイツの各情報機関の長が顔をそろえ、イラン情勢やウクライナでの戦争、エネルギーなどの供給の安全を話し合う場。内部の人間だけが見るはずのものだった。

なぜ、今になって。きっかけは、まったく別の事件だった。2025年にハニング氏の自宅などを家宅捜索したときに出てきたという。元幹部はハニング氏の秘書役で、今年3月までBNDの指導部にいた。ハニング氏は1998年12月から2005年11月までBND長官、その後2009年まで内務省の事務次官。辞めたあとは、安全保障とビジネスの助言を仕事にしていた。ドイツ紙ビルトは、ハニング氏がロシアと中国の政府機関とつながり、ロシア大統領府とは直通の連絡線を持っていたと報じている。容疑は、まだ容疑である。

OBを縛る決まりは、どの国も「外向き」

辞めた情報機関の人を、各国はどう縛っているのか。

日本には働きかけ規制がある。辞めてから2年間、辞める前の5年間に自分がいた局などの職員に、契約や処分について「こうしてくれ」と頼めない。米国は期間で縛る。情報機関の職にいた人は、離れてから30か月のあいだ、外国政府のために安全保障や情報の仕事に就けない。

ここが、ややこしい。どちらの決まりも見ているのは、OBが外に出て何をするかだ。今回は向きが逆だった。元上司が、昔の部下から資料をもらい続けた。ドイツには、元長官を期間で縛る決まりはない。逮捕を受けて、SPD(社会民主党)は元長官に生涯の就業禁止を設けるよう求め、緑の党はロビー活動の規制を強めるよう求めている。

ネットの評判

Yahoo!ニュースに配信された日本語記事のコメント欄には、400件を超える書き込みが並ぶ。多いのは「氷山の一角だろう」という受け取り方だ。ドイツがロシアと中国に経済とエネルギーで頼ってきたのだから、重要な機関に手が入っていても不思議はない、という声もある。日本に引きつける声も目立ち、配偶者や接待を通じた漏れを心配する書き込みが続いた。

はてなブックマークでは、驚きよりも「よく逮捕できたな」という反応が見られた。ウクライナ侵攻へのドイツの初動の鈍さを、歪んだ情報と結びつける見方もある。「ドイツに限らない」として、日本を他人事にしない声もあった。

日本の働きかけ規制には、受け取る側の義務も書いてある。違法な働きかけを受けた職員は、監察官に届け出なければならない。ドイツでは、12年のあいだ内部から声は上がらなかった。12年のやりとりが表に出たきっかけは、内部の報告ではなく、別の事件の家宅捜索だった。

出典

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