10/6 22:19 更新

それ、ほかの部署には
言わないで

――ある上司が、中途入社の部下に

写真はイメージ Photo by Megan O'Hanlon on Unsplash

10/6 15:53 / 発信国:日本

日銀ネットに「返します」の電文がない 通報した職員が立ち入り禁止に

日本銀行に中途入行した50代の女性職員が、2026年10月1日、日銀を相手に東京地裁へ提訴した。送金システムの不備を内部通報したところ、8月27日に本採用を拒否され、9月4日に書面で退行と庁舎への立ち入り禁止を命じられたという。総裁・副総裁へ追加の通報をした4日後だった。本採用拒否は無効だとして、地位確認と慰謝料、賃金の仮払いを求めている。弁護士JPニュースが報じた。

通報の中身は、送金の電文についてのものだ。日銀ネットに、送金の拒否・返金・取消しを伝える電文が用意されていない、という指摘である。日銀ネットは、日銀と取引先の金融機関が資金や国債の決済をオンラインで行うネットワークだ。

「返します」と伝える決まった形がない

「FATF勧告16」は、テロリストや犯罪者の資金移動を防ぎ、見つけるための国際基準だ。送金人と受取人の情報を、資金移動に関わる金融機関の間で共有することを定めている。金融庁は2025年6月18日にこの勧告の改訂を伝え、対応期限の目途を2030年末としている。

勧告16は、送金人などの情報が欠けた送金を受け取った銀行に、実行・停止・拒否の判断を求めている。では「拒否します」「返します」を、どうやって相手に伝えるのか。ここで出てくるのがISO 20022だ。送金の電文の書式を決めた国際規格で、用途ごとに型がある。「pacs.004」は、受け取った送金を適用できないとき――口座が閉じている、受取人が違う、制裁の対象に当たる――元の送金を指定して資金を返す電文である。「camt.056」は、送った側が止めてほしいと頼む電文だ。

女性の指摘は、この型が日銀ネットにない、というものだ。「決済は受け付けられた瞬間に完了するので、実質的に不可能に近い。義務を負うのは民間の銀行ですが、その手段を用意できるのは日本銀行だけです」(弁護士JPニュース)

日銀は、すでに一部で同じ規格を使っている

日銀がISO 20022そのものを拒んでいるわけではない。2015年以降、外国為替円決済と海外預り金関係の取引でISO 20022の電文を採用し、2020年以降はSwiftを使う各種システムでも運用している。日銀はそう公表している。2025年11月には2019年版へ移す予定だ。

サーバー室のネットワーク機器
写真はイメージ Photo by Albert Stoynov on Unsplash

争点は、規格を使うかどうかではなく、どの種類の電文まで用意するかにある。拒否・返金・取消しの電文を加えるかどうかは、日銀の公表ページでは確かめられなかった。

米国では、連邦準備制度のFedwireが2025年7月14日、長く使ってきた独自形式を廃止し、すべてをISO 20022の電文に置き換えた。

日銀側は、本採用拒否の理由をこう書いたという。「本行の管理職として、組織の置かれた事情や様々な制約を正しく理解し、それを前提に柔軟な視点で企画判断を行うことが十分にできていない」。システムの指摘が正しいかどうかには触れていない。

ネットの評判

Yahoo!ニュースに転載された記事には630件のコメントが付いた。多いのは組織の体質への批判だ。「組織内で声を上げる人は必要」「日本企業は社会的体裁を守るため内部通報者を排除する傾向がある」といった声が並ぶ。FRBやECBと同じ措置を取らないと危ない、という送金システムへの不安もある。一方で、採用時の説明と契約書のずれを問題にする声もある。

女性は4月1日の入行から庁舎に入れなくなるまで、無遅刻無欠勤で、注意や警告を受けたこともなかったという。

出典

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