10/6 22:19 更新

断られ続ける側は、
我慢するしかないのか

――記事のコメント欄に並んだ問い

写真はイメージ 撮影 Linason Blessing/CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)

10/5 00:16 / 発信国:日本

夫婦の性行為に条文はない 断られた側はどうなるのか、判例で確かめた

朝日新聞が10月4日、夫婦の間で性行為に応じるのは法律上の義務なのかを、家族法の研究者に聞いた記事を配信した。答えたのは青山学院大学の大島梨沙教授。民法に夫婦の性行為を定めた条文はないと説明し、「拒否しただけで有責とされるべきではないと私は考えています」と述べている。Yahoo!ニュースに転載された記事には、配信からおよそ半日で4,000件を超えるコメントが付いた。

そのコメント欄で目立ったのは、大島教授の見解への賛否ではない。断られ続ける側はどうすればいいのか、という問いだった。記事は、そこに触れていない。条文と判例で確かめた。

条文にはない。裁判所は重く見てきた

民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定める。同居と協力と扶助。性行為はここに入っていない。

ただ、裁判所は夫婦の性生活を軽く扱ってこなかった。最高裁は1962年2月6日、夫が性的不能だった事案で離婚を認め、夫婦の性生活を「婚姻の基本となるべき重要事項」と位置づけた。京都地裁は1987年5月12日、新婚旅行のあと3年半にわたり性交渉がなかった事案で、離婚と慰謝料の支払いを認めた。どちらも判決の原文は確認できず、法律事務所の解説で確かめた。

2023年7月13日に施行された改正刑法では、強制性交等罪が不同意性交等罪に改められた。大島教授はこれを踏まえ、「夫婦間でも性的同意が大事」な時代になったと指摘する。「夫婦は性行為をするものだ」という前提が、法律の側から崩れたという話である。

断られた側に残る道

テーブルに置かれた結婚指輪
写真はイメージ Photo by Jeric Turga on Unsplash
裁判所の建物
写真はイメージ Photo by Michael Hart on Unsplash

民法770条1項は、裁判で離婚を求められる場合を限定して並べている。「配偶者に不貞な行為があったとき」から始まり、最後に「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が置かれている。拒否した側が有責とされなくなっても、断られた側が離婚を求める道は、この最後の一つに残る。有責かどうかと、離婚できるかどうかは別である。

「断られるなら外でしてもいいのか」。この問いにも判例がある。最高裁は1996年3月26日、不貞行為の当時に婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、相手になった第三者は不法行為の責任を負わないとした。ただしこれは第三者が慰謝料を払うかどうかの判断で、破綻していたと認めるかどうかを決めるのは裁判所である。

ネットの評判

専門家のコメントには、拒否してよいとしても相手が離婚を選ぶことは受け入れるべきだ、という指摘があった。一方の意思を無視するものであってはならない、という意見も出た。最も共感を集めたコメントは、配偶者以外との関係が許されないのに拒まれ続けるのは対等ではない、という趣旨だった。共感は2万件を超えていた。

はてなブックマークでは258人が登録し、意見が割れた。性的自己決定権は夫婦の間でも制限されてはならないという声、合わないなら離婚すればいいという声、性的な強要はそれ自体が暴力だという声が並んだ。

記事は、フランスで「夫婦に性的関係をもつ義務はない」と民法に書き込む法案の審議が続いていることを紹介し、日本については大島教授の言葉で締めている。拒絶していいという「常識」が定着するなら、「あえて法律で位置づける方法をとらなくてもよいかもしれません」。

慰謝料まで認められた、その1987年の京都地裁の事案には、もう一つ事情があった。性的不能だった側は、結婚するときに、それを相手に伝えていなかった。

出典

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