10/6 22:19 更新

咲いていたから、抜かれた 213株

愛知・葦毛湿原/豊橋市が10月1日発表

写真はイメージ Photo by Andrew Small on Unsplash

10/4 14:10 / 発信国:日本

咲いているのに、抜く。天然記念物の湿原でサギソウ213株

花が増えるのは、いいことだ。たいていの場所では、そうである。

愛知県豊橋市が2026年10月1日に出した発表は、その常識を正面から裏切る。国指定天然記念物の葦毛湿原で、咲いていたサギソウ213株が、8月25日に5地点から抜き取られた。抜いたのは、湿原を守っている側だ。

発端は8月12日。木道沿いの狭い範囲に、サギソウがまとまって咲いているのが見つかった。こんな生え方は自然のなかでは起こらない、と市は見ている。花が、そろいすぎていた。球根は3月ごろに外から投げ込まれたと市は推定している。

花が増えて、サギソウが消える

ここで予想が外れる。園芸種のサギソウが増えれば湿原はにぎやかになる、とはならない。園芸種や他地域の植物は、在来種と容易に交雑する。市の説明では、交雑して雑種になってしまえば、もはやその地域だけの固有種とは認められない。扱いは「絶滅」である。増えたはずの花が、その場所のサギソウを消す側に回る。

湿原にかけられた木道
写真はイメージ Photo by Freezer on Unsplash

妙なのは、市がこの投げ込みを悪意と決めつけていないところだ。発表には「『葦毛湿原のサギソウを増やしたい』との善意の行動だった可能性もありますが」と書かれている。善意かもしれない、と先に認めている。そのうえで、同じ発表のタイトルは「【絶対にやめてください!】」から始まる。善意でも結果は破壊になる。その一点を、市は見出しで叫んでいる。

葦毛湿原が国の天然記念物になったのは2021年10月16日。指定面積は32,684平方メートル、日本最大規模の湧水湿地とされる。市は2013年1月から植生回復に取り組み、消えていた21種のうち15種を戻してきた。13年かけて15種を戻した場所に、球根が降ってきたことになる。

しかも初めてではない。投げ込みは2020年と2025年にも確認され、いずれも豊橋警察署に相談されている。過去に投げ込まれた球根には、植物ウイルスに感染していたものもあった。手口も変わってきているという。東愛知新聞の取材に、市文化財センターの担当者は、最初に見つかったときと比べ、近年は人目につきにくい地面に球根がまかれるようになったと述べた。サギソウの育て方に通じた者の仕業だという見方も示している。思いついて投げた、では説明がつかない。

市は文化庁と豊橋警察署に報告し、現地に警告文の看板を立てる予定だという。10月17日には葦毛湿原再生フォーラムも開かれる。

花が増えるのはいいことだ、という常識は、たいていの場所で正しい。ただし、花がやけにそろって咲いているときは、たぶん自然の仕事ではない。自然は、そんなにきれいに並ばない。

出典

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