『まったくのクソだ』。書いたのは身内
欧州委員会の内部掲示板に書き込まれた言葉
写真はイメージ Photo by Carl Campbell on Unsplash
「まったくのクソだ」EU自前のTeams代替、CEOの説明は「ボタンの位置」
職場に新しい連絡ツールが入ると、評判はまず悪い。欧州委員会も、その法則からは逃れられなかった。しかも悪口を書いたのは、入れた側である。
委員会は2026年の夏、米マイクロソフトのTeamsに代わる内部通信ツール「Element Pro」を入れた。開発したのは英国企業のElementで、オープンな通信規格Matrixの上に作られている。マイクロソフトのクラウドではなく委員会自身のインフラで動かすため、通信データをより強く管理できるという。技術主権パッケージを打ち出した6月からの流れで、位置づけは「Teamsの主権的な予備」。筋は通っている。
ところが、内部の掲示板が荒れた。ブリュッセルの媒体Brussels Signalが、Politicoの報道をもとに伝えている。ある職員は「ここに付加価値があるのか分からない」と書き、別の職員は「まったくのクソだ」と書いた。3人目は、Teamsと比べたElement Proの動きからすると、米国が自国の技術を止めると決めたら「米国は即座に戦争に勝つだろう」と書いた。有事の盾として用意したものを、真っ先に叩いているのが身内という構図である。
いちばん口の悪い一行が、いちばん筋が通っていた
4人目はこう書いた。Teamsについて「我々にあるのは、Microslopが中を覗き見しないという保証だけだ」。マイクロソフトをもじってけなしている。ところが文意をたどると、これはTeamsの擁護ではない。覗かないという約束しか手元にない、つまり管理はできていない、という話である。酷評で埋まった掲示板で、委員会の理屈をいちばん正確に代弁していたのは、いちばん口の悪い一行だった。
通話そのものが、反論だった
Elementのマシュー・ホジソン最高経営責任者は、Politicoの取材に対し、委員会はまだ試用中だと説明した。しかもその取材の通話は、Element Proを使ってかけられている。使い込んだソフトから乗り換えれば「初期の不具合」は当然ある、と彼は言う。英語の原文はteething issues、歯が生えるときの痛みに由来する言い回しだ。そして「認知的不協和」はいつでも起きる、ボタンの位置が違うというだけの理由でも、と続けた。国連とNATOも使っていると付け加えた。
性能でも安全でもなく、ボタンの位置。技術主権の最前線は、どうやらそこにあったらしい。
Teamsは、いまも委員会の主要な通信システムである。盾は、まだ壁に立てかけたままだ。
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