10/6 22:19 更新

丁寧なオーバーキルで笑っちゃったな

アンガーマネジメントの本を読んだ人

写真はイメージ Photo by Nicolas HIPPERT on Unsplash

10/4 14:03 / 発信国:日本

アンガーマネジメント本の皮肉批判が「皮肉」と言われた 鍵は2文字

怒りを、怒りのまま渡せない人がいる。言いたいことは山ほどあるのに、口から出るのは「へえ、すごいですね」。心当たりのある人が、アンガーマネジメントの本を開く。待っているのは、たぶん六秒数えましょう式の、お行儀のいい忠告だろう。

9月30日にXへ投稿された紹介は、そういう文章ではなかった。本には、怒りを皮肉で表現する人について「直接怒りを伝える度胸も交渉能力も無いばかりか、皮肉=知性と勘違いし勝手に優越感に浸り、歯止めもきかないので、かえって相手を深く傷つけてしまい余計なトラブルをひきおこす」と書かれていたという。度胸、交渉能力、思い違い、優越感、歯止め、傷、トラブル。一つの文のうちに、急所が七つ並んでいる。

投稿者は笑っていた。「丁寧なオーバーキルで笑っちゃったな」と書き、こう続けた。安全圏から皮肉を言うこと自体が、自分を危険な状態にさらす皮肉な状況になっている、と。自分で読んで、自分で刺されて、自分で笑っている。

話は、ここから投稿者の手を離れた。

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写真はイメージ Photo by NordWood Themes on Unsplash

矢印が、本のほうへ向いた

10月3日にTogetterへまとめられると、コメント欄では矢印が本の側へ回った。「作者はこれをどう言う気分で書いたんや 皮肉に見えるが」。皮肉を言う人を無能と断じることで自分を上に置いている、だから本も同じ穴の狢だ、という指摘も出た。はてなブックマークにも10月4日時点で279件が付き、「その本の文章からふつふつとした怒りが感じ取れる。相当悔しかったんだね。」といった読みがいくつも並んだ。皮肉を叱る文章が、皮肉になっている。構図としては、確かにきれいだ。

ただ、最初の投稿の一行目に、二文字だけ、見落とされやすい言葉がある。「大要」。あの連打は、本に印刷された文ではなく、読んだ本人の要約である。

書名も出ていない。まとめの題も「とあるアンガーマネジメントの本」のままだ。ページで本の名前らしきものが見えるのは、下のほうにあるAmazonの商品枠だ。これはまとめに付いた広告であり、投稿者が読んだ本だと確かめられたものではない。本誌も原文を確認できていない。

つまり、文体に腹を立てた人たちは、その文体を読んでいない。皮肉は、相手の読み取りに預ける芸である。読み取りはずれる。今回ずれたのは皮肉のほうではなく、要約のほうだった。丁寧なオーバーキルの矢は、一周して、読んだ全員の足元に落ちている。

出典

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