これは自分がAIに書いてもらったやつです
617ブクマを集めた体験記に、書いた本人だと名乗るユーザーが残したコメント
写真はイメージ Photo by Jaipreet Singh on Unsplash
「やったことある人にしか分からない」山手線一周記、書いたのはAIだった
「これ、やったことある人にしか分からないと思うけど」。そう前置きして始まる文章が、2026年10月2日、はてな匿名ダイアリーに投稿された。山手線を徒歩で一周した話だ。朝7時に新宿駅西口を出て、反時計回り、ゴールは夕方6時頃。約40キロ、約11時間、歩数はおよそ68,000歩。
これが伸びた。はてなブックマークでは10月4日時点で617人が登録し、コメントは219件。
ところが、そのコメント欄に、書いた本人だと名乗るユーザーが現れた。「これは自分がAIに書いてもらったやつです」。山手線の内側に住んでいるから、変だと分かるところは直してもらった、それでもアラは残っている、と続き、最後にこう添えてある。「結構リアリティあるなと他人事のように思った」。自分が出した原稿に、他人事の感想を書いている。
見破ったのは、塀だった
AIが書いたと聞けば、どうせ地名の並びが雑だったのだろうと思う。ところが指摘された箇所は、雑というより細かすぎた。
本文には「六義園のあたりは緑が多い」とある。これに「六義園は外からは塀しか見えない」。「恵比寿から目黒はずっと丘の上だから言うほど坂はないよ」。高輪ゲートウェイを「新しい。何もかも新しい」と書いた箇所には、ビルはできたばかりなのに「いつ歩いたんだろう」。「どこ歩いてるんだかわからない」という声もあった。
どれも、地図を上から見ていては出てこない。塀の高さは、塀の前に立った人の持ち物である。
もう一つの穴は、文体だった。本文の締めでは、山手線一周徒歩とは「東京の縮尺を身体にインストールする行為だと思う」と書いている。ここに「ClaudeCodeじゃなくてChatGPTが言いそう」。別の読者は「最後のまとめあたりの文章はAI感しかなかった」と書いた。冒頭の「東京という街を、徒歩の速度で強制的に全部見せられるイベント」にも、「誰も強制はしていないと思うぞ」。
おかしいのは、評価された部分だ。田端のあたりから感想が雑になるところは「リアル感ある」と書かれた。力を抜いた箇所だけが、人間に見えた。
歩いた人だけが持っていたもの
いちばん支持を集めたコメントは、こうだ。娘が小学生の頃、1日に半周ずつ、2日かけて歩いた。1日目の宿は、好きな駅の近くに取っておけばいい。「ちょっとした旅行みたいで楽しいよ。いい思い出になった」。
AIが書けなかったのは、40キロではなかった。68,000歩でも、坂の勾配でもない。好きな駅の近くのホテルを前の晩に押さえておく、という段取りのほうだ。
「やったことある人にしか分からない」ものは、たしかにあった。本文ではなく、コメント欄にあった。
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